米国の緊急車両架装メーカーであるLEHR社が、ニュージャージー州に新工場を開設しました。この新工場は、そのオペレーション全体にリーン生産方式のワークフローを全面的に導入しており、多品種少量生産における生産性向上のアプローチとして注目されます。
概要:緊急車両架装メーカーが新工場を開設
米国の警察、消防、救急といった緊急車両の架装(Upfitting)を専門に手掛けるLEHR社が、ニュージャージー州エジソンに新たな製造施設を開設したことが報じられました。架装とは、ベースとなる車両に特定の用途に応じた装備(例えば、パトカーの警告灯や無線機、特殊な収納棚など)を取り付け、完成させる工程を指します。顧客の要求仕様が多岐にわたるため、その生産形態は一品一様、あるいは多品種少量生産の性格が強いものとなります。
新工場の特徴:リーン生産方式の全面的導入
今回の発表で特に注目すべきは、新工場のオペレーション全体に「リーン生産方式のワークフロー」が組み込まれている点です。リーン生産方式は、トヨタ生産方式を源流とし、徹底的なムダの排除を通じて生産プロセス全体の効率を最大化する考え方です。一般的には量産ラインでその効果が語られることが多いですが、LEHR社はこれを個別受注生産に近い架装業務に適用しました。
これは、作業の標準化、動線の最適化、部品供給のジャストインタイム化などを通じて、車両一台あたりの作業時間を短縮し、リードタイムの削減と品質の安定化を目指すものと考えられます。多品種少量生産の現場では、段取り替えや仕様確認といった非定常作業が多く発生しがちですが、そうした工程にこそリーン生産のメスを入れ、プロセスを体系化することの重要性を示唆しています。日本の製造現場においても、類似の課題を抱える工場は少なくないでしょう。
物理的セキュリティの確保も重視
また、この新工場はフェンスで囲われた安全な駐車場を備えている点も特徴として挙げられています。これは、警察車両のような機密性の高い製品を扱う上で当然の要求事項とも言えますが、工場設計の段階から物理的なセキュリティを重要な要素として組み込んでいることを示しています。
顧客の資産である車両や、取り付けられる特殊な装備品を安全に保管・管理することは、品質や納期と同様に、顧客からの信頼を支える重要な基盤です。製品の保護だけでなく、知的財産や技術情報の漏洩防止という観点からも、工場全体のセキュリティ設計は、現代の工場運営において欠かすことのできない要素と言えるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回のLEHR社の新工場開設のニュースは、短いながらも日本の製造業にとって重要な示唆を含んでいます。以下に要点を整理します。
1. リーン生産の原則は生産形態を問わない
量産だけでなく、多品種少量生産や個別受注生産の現場においても、リーン生産の思想、すなわち「ムダをなくし、流れを良くする」という原則は有効です。自社の生産形態を理由に改善を諦めるのではなく、その特性に合わせてリーン生産の考え方をどう適用できるかを改めて検討する価値があります。
2. 新工場建設はプロセス革新の好機
新たな工場を建設する際は、単に生産能力を拡張するだけでなく、理想的なワークフローや生産方式をゼロベースで設計し直す絶好の機会となります。日々の改善活動も重要ですが、こうした大きな節目で生産プロセス全体を抜本的に見直すことが、持続的な競争力の源泉となります。
3. 基本に立ち返ることの重要性
生産性の向上(リーン生産)と安全・安心の確保(セキュリティ)は、いずれも製造業の根幹をなす基本です。他社の取り組みをきっかけとして、自社の工場運営がこれらの基本を忠実に実践できているか、形骸化していないかを定期的に見直すことが肝要です。


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