英国の大手食品メーカーGreencore社が公開した「生産監督者(Production Supervisor)」の求人情報。この具体的な事例をもとに、海外の製造現場における現場リーダーの役割や給与水準を分析し、日本のものづくり現場が向き合うべき課題と可能性を探ります。
英国食品メーカーの求人に見る現場監督者の姿
先日、英国の大手食品メーカーであるGreencore社が、「生産監督者(Production Supervisor)」の求人情報を公開しました。これは、同社のボストン工場における常勤(正社員)のポジションです。提示されている給与は時給£14.56と記載されています。
この一つの求人情報から、英国の製造現場における現場リーダーの待遇や位置づけについて、いくつかの点を読み取ることができます。日本の製造業に身を置く我々にとって、自社の現場運営や人材育成を考える上で、興味深い比較対象となるでしょう。
時給£14.56という給与水準の背景
まず注目すべきは、具体的な給与額です。時給£14.56という金額は、現在の為替レート(1ポンド=約200円で換算)で日本円にすると約2,912円となります。1日8時間、月20日勤務と仮定すると、月収は約46万6,000円、年収では約560万円という計算になります。
英国の法定最低賃金(National Living Wage、21歳以上)が£11.44(2024年4月時点)であることを踏まえると、この時給はそれを約27%上回る水準です。これは、単なる作業者ではなく、一定の責任とスキルを伴う監督者としての役割が評価された金額であると推察されます。日本の製造現場における班長や係長といった役職者の給与と比較してみると、その評価のあり方について考えさせられるものがあります。
「生産監督者」に期待される役割
「生産監督者(Production Supervisor)」という役職は、日本の工場でいうところの「班長」「組長」「係長」といった現場リーダーに相当します。その主な職務は、担当する生産ラインの計画達成に責任を持つことです。
具体的には、日々の生産計画に基づいた人員配置、作業の進捗管理、製品品質の維持、安全基準の遵守徹底などが挙げられます。また、現場で発生する様々な問題(設備の軽微な不具合、品質の異常、作業者間のトラブルなど)に対する一次対応や、上位の管理者への報告も重要な役割です。部下である作業員の指導・育成を担うことも多く、マネジメント能力と技術的な知見の両方が求められる、まさに現場運営の要となるポジションです。
日本の現場リーダーは、自身もプレーヤーとしてライン作業に従事しながら管理業務をこなす、いわゆる「プレイングマネージャー」であることが多いですが、海外では監督・管理業務に専念するケースも少なくありません。その役割と責任範囲が明確に定義されていることが、こうした専門職としての待遇につながっているのかもしれません。
日本の製造業への示唆
この一つの求人事例から、日本の製造業が学ぶべき点は少なくありません。以下に要点を整理します。
1. 現場リーダーの価値と待遇の再評価
現場の生産性を直接左右するリーダーの貢献度を、適切に評価し、待遇に反映させることの重要性です。責任の重さに見合った処遇は、優秀な人材の確保と定着、そして何より本人のモチベーション向上に不可欠です。時間あたりの価値という視点で、自社の現場リーダーの給与水準を客観的に見直してみるのも良いでしょう。
2. 役割と責任範囲の明確化
現場リーダーにどこまでの権限を与え、何を責任として求めるのかを明確にすることも重要です。役割が曖昧なままでは、本人が能力を最大限に発揮することは難しくなります。「監督者」という専門職として、その職務を定義し、必要な研修や教育の機会を提供していくことが、組織全体の力を底上げします。
3. グローバルな人件費動向の把握
海外に生産拠点を持つ企業や、今後国内で外国人材の活用を考える企業にとって、各国の労働市場における人件費の水準を把握しておくことは極めて重要です。このような現地の求人情報は、その実態を知る上での貴重な一次情報となります。グローバルな競争環境の中で、自社のコスト構造や人材戦略を考える上での一つの判断材料となるはずです。


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