米テキサス州、独自の基金で半導体エコシステムを強化 – フォトマスク製造への支援事例

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米国内での半導体サプライチェーン構築の動きが加速する中、テキサス州が独自の基金を通じて企業の誘致や投資拡大を後押ししています。今回はフォトマスク製造企業の事例から、州レベルでの具体的な産業支援の動きと、それが日本の製造業に与える示唆を考察します。

テキサス州中部で加速する半導体製造拠点の集積

米テキサス州では、かねてより半導体関連企業の集積が進んでいましたが、その動きが一段と活発化しています。最近の事例として、半導体製造に不可欠なフォトマスクを手がけるTekscend Photomask社が、同州ラウンドロック市での事業を加速させることが報じられました。同社は、テキサス州が設立した「テキサス半導体イノベーション基金(TSIF)」からの支援が、この度の投資判断を後押ししたと述べています。

サプライチェーンの要「フォトマスク」への支援が意味すること

フォトマスクは、半導体の微細な回路パターンをシリコンウエハーに転写する際の「原版」となる部材です。製造工程の根幹を担う極めて重要な部品であり、その安定供給は半導体サプライチェーン全体の強靭性に直結します。今回のTekscend社のような専門性の高い部材メーカーへの支援は、単に大規模な半導体工場(ファブ)を誘致するだけでなく、周辺の材料・装置産業も含めた総合的なエコシステムの構築を州政府が重視していることの表れと見て取れます。完成品メーカーだけでなく、サプライチェーンの上流に位置する企業の立地や投資を促すことで、より強固で自律的な生産基盤を州内に築こうという戦略的な意図がうかがえます。

連邦政府と州政府による重層的な産業政策

ご承知の通り、米国では連邦政府がCHIPS法に基づき、国内の半導体産業へ大規模な補助金を提供しています。しかし、今回の事例が示すように、それに加えて各州が独自のインセンティブや基金を用意し、企業誘致競争を繰り広げているのが実情です。テキサス州のTSIFは、まさにその代表例と言えるでしょう。企業側から見れば、連邦政府の支援に加えて、州独自の税制優遇、インフラ整備、人材育成プログラムといった多角的な支援を受けられる可能性があり、これらが立地選定における重要な判断材料となります。我々日本の製造業が米国への進出や事業拡大を検討する際には、こうした国と州の重層的な政策動向を注視し、最大限に活用する視点が不可欠です。

日本の製造業への示唆

今回のテキサス州の動きから、日本の製造業関係者が得るべき実務的な示唆を以下に整理します。

1. サプライチェーン再構築は「エコシステム」単位で進展:
米国の半導体サプライチェーン強化は、大規模工場の誘致に留まりません。材料、部材、製造装置、後工程といった関連産業全体を国内(あるいは州内)に集積させる「エコシステム」の構築を目指す動きが本格化しています。自社がその中でどのような役割を担えるのか、サプライチェーン全体を俯瞰して事業機会を捉える必要があります。

2. 海外進出における「州レベル」の政策分析の重要性:
米国での投資を検討する際、CHIPS法のような連邦レベルの政策だけでなく、各州が独自に展開する支援策の調査・分析が極めて重要になります。補助金や税制優遇はもちろん、人材確保に向けた地域の教育機関との連携、インフラ整備計画など、事業運営に直結する要素を多角的に評価し、最適な立地を選定する緻密な戦略が求められます。

3. 基幹部材・技術の戦略的価値の再認識:
フォトマスクのように、最終製品からは見えにくいもののサプライチェーンの根幹を支える部材や技術の戦略的重要性は、今後ますます高まります。自社が保有する技術や製品が、海外のサプライチェーン強靭化の文脈においてどのような価値を持つのかを再評価し、交渉や事業展開に活かしていくことが肝要です。

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