業界特化型フィンテックが拓く、製造業の新たな経費・購買管理

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昨今、特定の業界の業務プロセスに特化した金融サービスが登場し始めています。一見、製造業とは縁遠い映画制作業界の事例から、我々の工場の経費管理や購買業務の効率化につながるヒントを探ります。

はじめに:異業種から学ぶ「業界特化型」の視点

先日、米国の映画制作業界向けに、制作管理ソフトウェアと一体化した新しい法人クレジットカードが発表され、話題となりました。これは「Saturation」という企業が提供するサービスで、映画や映像プロジェクトごとの予算管理、機材や消耗品の購入、経費の追跡といった一連のプロセスを、カード決済とソフトウェアを連携させることで効率化することを目的としています。プロジェクト単位で動くことが多い制作現場の財務管理を、抜本的に改善しようという試みです。

このような「業界特化型」の金融ソリューションは、我々日本の製造業にとっても決して他人事ではありません。むしろ、製造現場が抱える特有の課題を解決する上で、非常に示唆に富んでいると言えるでしょう。

製造業における購買・経費管理の現状と課題

日本の製造現場では、日々の生産活動の中で様々な購買や経費支出が発生します。例えば、次のような場面を思い浮かべてみてください。

・試作品開発プロジェクトで、急遽必要になった特殊な部品や材料を調達する。
・設備の突発的な故障に対応するため、現場の判断で交換部品や修理サービスを緊急手配する。
・改善活動の一環で、現場で使う工具や治具、消耗品を少量多品種で購入する。

こうした支出は、従来の経費精算システムや一般的な法人カードでは管理が煩雑になりがちです。多くの工場では、現場担当者による立替払いや仮払い申請、後日行われる領収書を添付した精算業務に多くの工数が割かれています。また、経理部門も、どのプロジェクトや勘定科目に紐づく支出なのかを一件一件確認する必要があり、大きな負担となっていました。結果として、現場は柔軟な対応が取りにくく、経営層はコストの実態をリアルタイムに把握することが難しいという課題を抱えています。

「業務システム連携型カード」がもたらす可能性

もし、映画業界の事例のように、製造業の業務プロセスに最適化された金融サービスが存在すれば、これらの課題は大きく改善される可能性があります。例えば、生産管理システムや購買管理システムと連携した法人カードを導入することで、以下のような効果が期待できます。

1. リアルタイムでの予実管理の実現
現場担当者がカードで決済した時点で、その情報が即座に管理システムに反映されます。これにより、プロジェクトごと、あるいは部署ごとの予算の執行状況がリアルタイムで可視化され、予算超過のリスクを早期に把握できます。

2. 現場の裁量とガバナンスの両立
現場リーダーや担当者ごとに、利用上限額や購入可能な品目(サプライヤー)を設定したカードを付与することが可能です。これにより、現場の判断で迅速な購買を行いつつも、会社全体としての支出の統制(ガバナンス)を効かせることができます。

3. 経費精算業務の抜本的な効率化
立替払いが不要になることで、現場担当者の負担が軽減されるだけでなく、領収書の糊付けや申請書の作成・承認といった一連の事務作業が大幅に削減されます。これは、経理部門の月次決算業務の早期化にも直結します。

4. 購買データの戦略的活用
誰が、いつ、どこで、何を、いくらで購入したかというデータがデジタルで一元的に蓄積されます。このデータを分析することで、サプライヤーごとの価格交渉や、購買品目の標準化によるコスト削減など、より戦略的な購買活動へと繋げていくことができます。

日本の製造業への示唆

今回の異業種の事例は、私たちに金融サービスとの付き合い方を見直すきっかけを与えてくれます。単なる決済手段として捉えるのではなく、自社の業務プロセスを効率化し、データを活用するための「ツール」として捉え直す視点が重要です。

・視点の転換:経費精算や購買のプロセスを「コストセンター」ではなく、効率化によって新たな価値を生み出す「プロフィットセンター」へと転換する意識を持つことが求められます。現場の非効率な間接業務を削減できれば、その時間をより付加価値の高い業務、例えば品質改善や生産性向上活動に振り向けることができます。

・DXの具体策として:多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げていますが、その具体的な一歩として、こうしたバックオフィス業務の改革は着手しやすく、効果も実感しやすい領域です。現場の負担軽減は、従業員のエンゲージメント向上にも繋がります。

・ソリューションの探索:現時点では、日本の製造業に完全に特化した金融サービスはまだ多くありません。しかし、今後、様々な業界で同様の動きが加速していくことは想像に難くありません。自社の課題を明確にした上で、既存の法人カードサービスや経費精算システムの中から、自社の業務に適合するものはないか、アンテナを高く張っておくことが肝要です。

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