ナイジェリア・オグン州で、建築基準に違反した開発業者に対し、州政府が厳しい姿勢を示しています。この一見遠い国の出来事は、海外に生産拠点を持つ、あるいは計画する日本の製造業にとって、コンプライアンス・リスク管理の重要性を再認識させる貴重な教訓を含んでいます。
ナイジェリア・オグン州での当局による警告
報道によると、ナイジェリア南西部のオグン州において、州の建築生産管理局が建築基準や許可プロセスを遵守しない開発業者に対して厳格な措置を取る方針を明らかにしました。具体的には、当局が検査の上で問題があると判断した建設現場を「封印(government seal)」し、開発業者がこれを無視して工事を続行した場合には、法的な措置も辞さないという強い警告を発しています。これは、日本で言えば行政による操業停止命令や使用禁止命令に近いものと理解できます。
対岸の火事ではない、海外拠点運営における法規制リスク
このナイジェリアの事例は、日本の製造業が海外で事業を展開する上で、決して他人事ではありません。特に新興国へ工場進出を果たす際、私たちは現地の建築基準法、環境関連法、労働安全衛生法など、多岐にわたる法規制に直面します。これらの規制は、日本国内の常識や基準とは大きく異なる場合も少なくありません。
「現地の慣習だから」「これくらいは問題ないだろう」といった安易な判断が、後々大きな事業リスクに繋がる可能性があります。当局からの操業停止命令は、生産計画の遅延だけでなく、サプライチェーン全体に深刻な影響を及ぼしかねません。また、罰金や是正措置に伴う想定外のコスト発生、さらには企業の社会的信用の失墜といった事態も懸念されます。
求められる「現地目線」でのコンプライアンス体制
こうしたリスクを未然に防ぐためには、進出を計画する段階から、現地の法規制に対する深い理解が不可欠です。現地の法律専門家やコンサルタントを起用し、建設許可の取得プロセスから、工場の設計、設備の仕様、操業開始後の環境基準に至るまで、細部にわたる確認が求められます。
また、本社が主導しつつも、現地法人にコンプライアンスを徹底させる体制構築も重要です。現地の担当者への教育はもちろん、実際に建設や運営を担う現地のパートナー企業が、法規制を遵守する意識と能力を持っているかを慎重に見極める必要があります。パートナー企業の違反が、結果として自社の事業リスクに直結することを常に念頭に置くべきでしょう。
日本の製造業への示唆
今回のナイジェリアの事例は、グローバルに事業を展開する日本の製造業に対し、以下の重要な示唆を与えてくれます。
1. 海外進出時のデューデリジェンスの徹底
土地の選定や建設計画の初期段階で、現地の建築、環境、労働安全などに関する法規制の調査を徹底することが極めて重要です。専門家の助言を得ながら、リスクを洗い出すプロセスを省略してはなりません。
2. グローバルなコンプライアンス体制の構築
日本本社のコンプライアンス部門と現地法人が密に連携し、現地の法規制を正しく理解し、遵守するための具体的な仕組みやルールを構築・運用することが求められます。これは、単なる文書作成に留まらず、現場での実践が伴わなければ意味を成しません。
3. 現地パートナーの選定基準の明確化
工場の建設や一部業務を委託する現地パートナー企業を選定する際には、技術力やコストだけでなく、コンプライアンス遵守の姿勢を重要な評価軸に加えるべきです。契約書にも、関連法規の遵守を明確に盛り込むことが賢明です。
4. 行政措置を重大な事業リスクとして認識
当局による操業停止や改善命令は、単なる手続き上の遅延ではなく、サプライチェーンを寸断し、顧客からの信頼を損なう経営上の重大なリスクであるという認識を、経営層から現場まで共有することが肝要です。


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