ターボ機械の設計・製造プロセスを革新する、米Concepts NREC社の新ソフトウェア動向

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ターボ機械の設計・製造ソリューションを提供する米Concepts NREC社が、統合ソフトウェア「Agile Engineering Design System」の最新版を発表しました。本稿では、その技術的な進化点と、それが日本の製造業、特にポンプやコンプレッサー、ターボチャージャーなどを手掛ける企業の開発・製造現場に与える影響について考察します。

ターボ機械開発の統合プラットフォームが進化

航空宇宙、発電、自動車、各種産業機械など、幅広い分野で基幹部品として使用されるターボ機械。その性能は製品全体の競争力を大きく左右します。このターボ機械の設計、解析、製造までを一気通貫で支援するソフトウェアプラットフォームとして、米Concepts NREC社の「Agile Engineering Design System」は業界で広く知られています。

この度、同社から最新バージョン「v2025.2」が発表されました。今回のバージョンアップは、単なる機能改善に留まらず、より高度な製品開発と製造プロセスの連携を深めるものとして注目されます。日本の製造現場においても、開発リードタイムの短縮や性能向上といった長年の課題解決に繋がる可能性があります。

新バージョンにおける主要な技術的強化点

今回のアップデートで特に注目すべきは、設計の核心部分に関わる機能の高度化です。具体的には、以下の点が挙げられます。

1. ボリュート(渦巻きケーシング)モデリングの高度化
遠心式のポンプやコンプレッサーにおいて、羽根車から吐出された流体を集めて導く渦巻き状のケーシング(ボリュート)は、機械全体の効率や騒音特性を決定づける重要な部品です。従来、この複雑な三次元形状の設計には多くの工数と試行錯誤が必要でした。新バージョンでは、このボリュートモデリング機能が強化され、より少ない手順で高性能な形状を生成できるようになったと見られます。これは、設計の初期段階でより多くの設計案を迅速に検討できることを意味し、性能の作り込みと開発期間の短縮に直結します。

2. 二次流れ解析能力の強化
ターボ機械の内部では、主たる流れの他に、壁面付近などで発生する「二次流れ」と呼ばれる複雑な渦が発生します。これは性能損失の大きな原因であり、その挙動を正確に予測し、設計に反映させることが高効率化の鍵となります。今回の機能強化は、この二次流れのシミュレーション精度や解析能力を高めるものと考えられます。従来は熟練技術者の経験や勘に頼る部分も大きかった領域を、より科学的なアプローチで設計に織り込むことが可能になり、手戻りの削減や性能の安定化が期待できます。

3. 設計から製造(CAM)への連携最適化
ターボ機械の羽根車(インペラ)やケーシングは、複雑な自由曲面で構成されるため、その加工には5軸加工機などが用いられます。設計データがスムーズに製造工程(CAM)に連携できなければ、加工パスの生成に多大な時間がかかったり、設計意図が正確に反映されないといった問題が生じます。今回のアップデートでは、こうした設計と製造の連携がさらに最適化された模様です。設計段階で加工要件を考慮し、製造しやすい形状データを作成することで、後工程でのトラブルを未然に防ぎ、生産性向上に貢献します。

日本の製造業への示唆

今回のConcepts NREC社の動向は、日本の製造業にとっていくつかの重要な示唆を与えています。

1. 専門特化型ソリューションの戦略的活用
汎用的なCAD/CAE/CAMツールに加え、ターボ機械のような特定分野に特化したソリューションを導入することが、製品の差別化と競争力強化に繋がります。自社のコア技術領域を見極め、最適なデジタルツールへ戦略的に投資する経営判断がますます重要になるでしょう。

2. 設計・製造の「一気通貫」思想の深化
設計データがそのまま製造データとなり、シミュレーションによって事前に性能や加工性が検証される。このようなデジタル技術を基盤とした「一気通貫」の開発プロセスは、もはや特別なものではありません。今回のアップデートは、その連携がさらに深く、高度になっていることを示しています。部門間の壁を取り払い、データを軸としたプロセス改革を進める必要があります。

3. 熟練技術のデジタル化と技術承継
流体の挙動の解釈や、複雑な形状の加工ノウハウなど、これまで熟練技術者の暗黙知に頼ってきた部分が、ソフトウェアの進化によって形式知化されつつあります。これは、技術承継の課題を抱える多くの企業にとって、技術を組織の資産として蓄積・活用する好機と捉えることができます。ツールを使いこなす人材の育成と並行して、ベテランの知見をデジタルデータとして次世代に繋ぐ仕組みづくりが求められます。

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