ベトナムに拠点を置く太陽光パネルメーカー、Boviet Solarが米国ノースカロライナ州グリーンビルに大規模な製造拠点を新設する計画を発表しました。この動きは、米国の産業政策を背景としたサプライチェーンの「国内回帰」や「現地化」を象徴するものであり、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。
Boviet Solarの米国新工場、計画の概要
ベトナムを拠点とする大手太陽光パネルメーカーであるBoviet Solar社が、米国での生産能力を大幅に拡大する計画を明らかにしました。報道によれば、同社はノースカロライナ州グリーンビルに大規模な太陽光(PV)モジュール製造工場を建設し、2025年からの稼働開始を予定しているとのことです。第一段階として、約52万平方フィート(約4.8万平方メートル)の施設が稼働する見込みで、これは同社にとって米国内で初の大規模生産拠点となります。
背景にある米国の国内生産優遇策とサプライチェーン再編
今回のBoviet Solar社の米国進出は、単独の企業戦略というよりも、近年の世界的なサプライチェーン再編の大きな潮流の中に位置づけられます。特に米国では、インフレ抑制法(IRA)に代表される政策により、クリーンエネルギー製品の国内生産に対して大規模な税額控除などの優遇措置が講じられています。これにより、海外企業であっても米国内に工場を建設する経済的なインセンティブが非常に高まっています。
また、米中間の貿易摩擦や、コロナ禍で露呈した特定地域へのサプライチェーン依存のリスクを踏まえ、多くの企業が生産拠点を消費地の近くに移す「ニアショアリング」や、自国内に戻す「リショアリング」を加速させています。エネルギー安全保障の観点からも、基幹部品である太陽光パネルの国内生産能力を高めることは、米国にとって重要な国家戦略となっています。Boviet Solar社の動きは、こうした経済的・地政学的な要請に応えるものと言えるでしょう。
日本の製造業から見た視点
このような海外企業の米国での現地生産化の動きは、日本の製造業にとって二つの側面から捉える必要があります。一つは、競争環境の変化です。特に米国市場で事業を展開する企業にとって、IRAなどの補助金を得てコスト競争力を高めた新たな競合が登場することを意味します。これまで通りのやり方では、価格面で不利になる可能性も考慮しなくてはなりません。
もう一方では、これは新たな事業機会の創出にも繋がります。大規模な工場が新設される際には、そこに導入される製造装置、高品質な部材や素材、精密部品、そして工場の安定稼働を支える品質管理システムなど、多岐にわたる需要が生まれます。日本の製造業が持つ高い技術力や品質は、こうした新しい工場の生産性や品質を向上させる上で大きな強みとなり得ます。現地のサプライヤーとして、こうした新たな製造エコシステムに参画する道筋を検討する価値は大きいでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の事例から、日本の製造業が実務レベルで留意すべき点を以下に整理します。
1. 主要国の産業政策の動向を注視する:
米国のIRAのように、各国の政策はグローバルな競争条件を大きく左右します。自社の主力市場やサプライチェーンに関わる国の政策変更を常に把握し、事業戦略への影響を迅速に分析・評価する体制が不可欠です。
2. サプライチェーンの再評価と強靭化:
地政学リスクや経済安全保障の観点から、改めて自社のサプライチェーンを見直すことが求められます。特定地域への過度な依存を避け、生産拠点の分散や、重要な市場での現地生産化(地産地消)を、コストだけでなく安定供給の観点から検討することが重要になります。
3. 新たな需要への対応準備:
海外での工場新設ラッシュは、関連する設備・部材メーカーにとっては大きな商機です。自社の技術や製品が、現地の新工場でどのような付加価値を提供できるかを具体的に検討し、現地のニーズに合わせた提案活動を積極的に行っていくことが、今後の成長の鍵となるでしょう。


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