インドの「クリエイティブエコノミー」に学ぶ、製造業の新たな価値創出

global

インドのメディアが、映像や音響といったクリエイティブ産業が国内で約85万人の雇用を創出する見込みだと報じました。一見、製造業とは縁遠い話題に聞こえるかもしれませんが、この動きは「モノづくり」から「コトづくり」への転換を迫られる日本の製造業にとって、重要な示唆を含んでいます。

インドで拡大するクリエイティブ産業

インドのメディア「Mumbai Mirror」によると、同国では映像、音響、デジタル配信といったクリエイティブ分野が経済の新たな牽引役となり、約85万人規模の雇用を生み出す可能性があるとされています。この記事では、制作管理(プロダクションマネジメント)からポストプロダクション、デジタル配信に至るまで、多様な職種が生まれることが示唆されています。これは、デジタル技術の進展と普及を背景に、コンテンツという無形資産が大きな経済的価値を持つ時代になったことを象徴する動きと言えるでしょう。

「モノ」の価値から「コト」の価値へ

このインドでの動きは、日本の製造業が現在直面している大きな潮流と重なります。それは、単に優れた製品(モノ)を製造・販売するだけでなく、製品を通じて顧客にどのような体験や価値(コト)を提供できるかという視点へのシフトです。かつては品質、コスト、納期(QCD)の追求が至上命題でしたが、今日では製品にサービスやソリューションを組み合わせ、顧客の課題解決に貢献することが競争力の源泉となりつつあります。

例えば、建設機械メーカーが自社の製品にセンサーを搭載し、稼働状況の遠隔監視や予防保全サービスを提供したり、工作機械メーカーが加工ノウハウをデジタルコンテンツ化して提供したりする例は、まさに製造業における「コトづくり」の実践です。こうしたサービスは、製品のライフサイクル全体を通じて顧客との関係を維持し、新たな収益機会を生み出す可能性を秘めています。

製造現場に求められるスキルの変化

クリエイティブ産業の発展がデジタル技術を前提としているように、製造業における「コトづくり」もまた、デジタル技術の活用が不可欠です。これは、現場で働く技術者やリーダーに求められるスキルセットの変化を促します。

従来の機械工学や電気電子といった専門知識に加え、今後はデータを分析・活用する能力、ソフトウェアの知識、さらには顧客にとっての価値をデザインするUI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンス)の視点などが重要性を増してきます。熟練技術者の技能を映像やAR(拡張現実)で若手に伝承する、あるいは工場の稼働データを可視化して改善活動に繋げるといった取り組みは、製造現場におけるクリエイティブな発想とデジタル技術の融合例と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のインドの事例から、日本の製造業が汲み取るべき要点は以下の通りです。

1. 事業領域の再定義
自社の強みを「モノをつくる技術」に限定せず、「技術を活かして顧客の課題を解決するサービス」へと事業領域を再定義する視点が重要です。製品をプラットフォームと捉え、どのような付加価値(データ、サービス、コンテンツ)を乗せられるかを考える必要があります。

2. デジタル人材・クリエイティブ人材の育成
サービスやソリューションを創出するためには、従来型の技術者とは異なるスキルを持つ人材が不可欠です。社内での学び直しの機会を提供するとともに、ITやデザインなど、異分野の専門知識を持つ人材を積極的に登用し、組織内の知見を多様化させることが求められます。

3. 異業種のビジネスモデルからの学習
IT、メディア、コンテンツ産業といった、これまで接点の少なかった業界のビジネスモデルやサプライチェーンの仕組みを学ぶことは、新たな発想の源泉となります。物理的なモノの流れだけでなく、データやサービスの価値連鎖をいかに構築するかという視点は、今後の事業開発において極めて重要になるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました