異分野の組織改革に学ぶ、これからの生産管理とブランド戦略

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バングラデシュの国立芸術アカデミーで行われた組織改革のニュースは、一見、製造業とは無関係に思えるかもしれません。しかし、その中に含まれる「プロダクション・マネジメント」や「ナショナル・ブランディング」といった概念は、日本の製造業が直面する課題を乗り越えるための重要なヒントを与えてくれます。

芸術アカデミーに見る、事業変革のための組織設計

先日、バングラデシュの国立芸術アカデミー「シルパカラ・アカデミー」が、組織の大規模な刷新を行ったことが報じられました。この改革では、新たに「ナショナル・ブランディング」「プロダクション・マネジメント」「研究・出版・ニューメディア」といった部門が設立されたと伝えられています。芸術という、ものづくりとは異なる分野の組織改革ですが、その内容は我々製造業にとっても示唆に富むものです。

特に注目すべきは「プロダクション・マネジメント」部門の設立です。芸術の世界におけるプロダクション・マネジメントは、演劇やコンサート、展示会などの企画から実行、完成に至るまで、予算、スケジュール、人員、品質といったあらゆる要素を管理する役割を担います。これは、製造業における「生産管理」と本質的に同じ概念であり、QCD(品質・コスト・納期)を最適化し、価値ある成果物を生み出すという目的を共有しています。伝統的な芸術組織が、この管理機能を専門部門として強化したという事実は、事業の根幹を支える管理プロセスの重要性を改めて浮き彫りにしています。

「生産管理」から「プロダクション・マネジメント」へ

日本の製造現場では「生産管理」という言葉が定着していますが、このアカデミーの事例は、その役割をより広く捉え直すきっかけを与えてくれます。単に工場内の工程や納期を管理するだけでなく、製品という「作品」が企画され、顧客に届けられ、価値を発揮するまでの一連のプロセス全体を俯瞰し、最適化する視点、すなわち「プロダクション・マネジメント」の視点が今後ますます重要になるでしょう。

例えば、開発・設計部門との連携を密にし、製造しやすい設計(DR:Design for Manufacturability)を追求するだけでなく、マーケティング部門と協力して市場の需要を的確に生産計画に反映させる、あるいはサプライチェーン全体を最適化して顧客への価値提供を最大化するといった、より戦略的な役割が求められます。部門の壁を越え、全体の指揮者(プロデューサー)のような視点を持つことが、これからの生産管理担当者や工場運営者には不可欠となるかもしれません。

ブランド価値の構築という視点

また、「ナショナル・ブランディング」部門の新設も興味深い点です。これは、国の文化・芸術を通じて国家全体のブランドイメージを高めようという意図の表れでしょう。これを製造業に置き換えれば、自社の製品や技術が、いかにして「Made in Japan」というブランド価値に貢献しているかを意識し、戦略的に高めていく活動に他なりません。

優れた品質の製品を黙々と作り続けるだけでは、グローバルな競争の中でその価値が正しく伝わらない時代です。自社のものづくりが持つストーリーや哲学、社会への貢献といった無形の価値を、組織として明確に意識し、発信していく。こうしたブランド構築の視点を、生産現場も含めた全社で共有することが、企業の持続的な成長に繋がると考えられます。

日本の製造業への示唆

今回の異分野の事例から、日本の製造業が実務に取り入れるべき要点を以下に整理します。

1. 組織の柔軟な見直しと機能強化
事業環境の変化に対応するため、従来の組織構造に固執せず、戦略的に重要な機能を専門部署として独立・強化することを検討すべきです。特に、部門横断的なプロセス管理機能は、企業の競争力を左右する重要な要素となります。

2. 「生産管理」の役割の拡張
工場内の最適化にとどまらず、サプライチェーン全体、さらには製品ライフサイクル全体を俯瞰する「プロダクション・マネジメント」へと役割を拡張する視点が求められます。他部門との連携をこれまで以上に強化し、全体最適の実現を目指すことが重要です。

3. 無形資産(ブランド価値)の戦略的管理
自社の技術力や品質が、いかに企業ブランドや「Made in Japan」ブランドに貢献しているかを意識し、それを維持・向上させるための活動を組織的に行う必要があります。品質管理や生産技術の取り組みそのものが、強力なブランドストーリーになり得ます。

4. デジタル技術の戦略的活用
「ニューメディア」部門の設立に見られるように、デジタル技術を活用した情報発信や新たな価値創造は、あらゆる組織にとって必須の課題です。製造業においても、DXを単なる効率化ツールとして捉えるのではなく、ブランド構築や新たな事業モデルの創出に繋げる戦略的な視点が不可欠です。

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