ドイツ政府が、製造業に不可欠な重要物資のサプライチェーンを確保するため、国際的なパートナーとの「共同行動」に前向きな姿勢を示したと報じられました。この動きは、資源調達の多くを海外に依存する日本の製造業にとっても、決して他人事ではない重要な示唆を含んでいます。
ドイツ政府、サプライチェーン強靭化に向けた国際連携を表明
先般、ブルームバーグ通信は、ドイツ政府が製造業に不可欠な重要物資へのアクセスを確保するため、国際的なパートナーとの「共同行動」も辞さない考えであることを報じました。これは、近年のコロナ禍や地政学的な緊張の高まりを受け、特定の国に依存するサプライチェーンの脆弱性が顕在化したことへの危機感の表れと言えるでしょう。ここで言う「共同行動」には、友好国間での共同調達や備蓄、代替技術開発への共同投資などが含まれると考えられます。
自動車産業をはじめとする強力な製造業を抱えるドイツにとって、レアアースやリチウム、特定の半導体材料などの安定供給は、国の経済安全保障そのものに直結する課題です。これまでの企業努力による調達先の多様化に加え、国家レベルでの枠組み作りによって、より強靭な供給網を構築しようという強い意志が感じられます。
製造業の生命線を揺るがす「依存」のリスク
このドイツの動きの背景には、特定の供給元への過度な依存が、単なる納期遅延やコスト増といった事業リスクにとどまらず、国家間の外交カードとして利用されかねないという認識があります。これは、過去にレアアースの輸出規制などを経験した日本の製造業関係者にとっても、改めて認識すべき点です。EV化やデジタル化の進展により、これまで以上に重要鉱物や先端部材の需要が高まる中、供給が滞れば生産ラインの停止に直結し、企業の存続すら危うくする可能性があります。
これまでのサプライチェーン管理は、主にコストと品質、納期(QCD)の最適化という観点から構築されてきました。しかし今後は、地政学的な安定性や供給元の多様性といった「経済安全保障」の視点を、経営の重要指標として組み込むことが不可欠となりつつあります。
日本の製造業における現状と課題
日本政府もまた、経済安全保障推進法を制定するなど、重要物資の安定供給確保に向けた取り組みを強化しています。しかし、その実効性を高めるのは、現場でサプライチェーンを運営する個々の企業の取り組みです。多くの企業では、BCP(事業継続計画)の見直しや、調達先の複数化(いわゆるチャイナ・プラスワンなど)を進めていますが、依然としてコスト競争力との間で難しい判断を迫られているのが実情ではないでしょうか。
今回のドイツの動きは、サプライチェーンの強靭化がもはや一企業の努力だけでは限界があり、同じ価値観を持つ国々との連携がグローバルな潮流となりつつあることを示唆しています。自社の調達網を改めて棚卸しし、どこにどのようなリスクが潜んでいるのかを詳細に可視化・分析することが、これまで以上に重要になっています。
日本の製造業への示唆
今回の報道から、日本の製造業関係者が実務上考慮すべき点を以下に整理します。
1. マクロな視点での情報収集:
サプライチェーンのリスクは、自社や直接の取引先だけでなく、国家間の関係や国際情勢に大きく左右されます。ドイツをはじめとする主要製造国の政策動向や、国際連携の枠組みに関する情報を常に注視し、自社の事業戦略に反映させることが重要です。
2. サプライチェーンの再評価と可視化:
コスト効率一辺倒の調達戦略を見直し、「安定供給」という観点からサプライチェーン全体を再評価すべき時期に来ています。ティア1(一次サプライヤー)だけでなく、ティア2、ティア3といった上流まで遡り、どこに地政学的なボトルネックが潜んでいるかを可視化する取り組みが求められます。
3. 調達戦略の複線化と国内回帰の検討:
特定国・特定地域への依存度を低減するため、調達先の多様化をさらに加速させる必要があります。また、政府の補助金制度なども活用しつつ、重要部材・部品の一部の国内生産への回帰や、国内サプライヤーの育成も長期的な視点で検討すべき選択肢と言えるでしょう。
4. 代替技術・リサイクル技術への投資:
特定資源への依存そのものを低減するアプローチも不可欠です。希少資源を使わない代替材料の開発や、使用済み製品からの資源回収・リサイクル技術の確立は、供給リスクを根本的に解決し、新たな競争力にも繋がる可能性があります。


コメント