「空飛ぶクルマ」として注目されるeVTOL(電動垂直離着陸機)の開発をリードする米Joby Aviation社が、オハイオ州に大規模な製造施設を取得しました。これは、同社が開発フェーズから本格的な量産フェーズへの移行を具体的に進めていることを示す動きであり、新たな航空機市場の立ち上がりを予感させます。
生産能力倍増に向けた具体的な一歩
報道によれば、Joby Aviation社はオハイオ州デイトン近郊に、70万平方フィート(約6万5000平方メートル)の広さを持つ製造施設を取得しました。これは東京ドームの約1.4倍に相当する規模であり、2027年までにeVTOLの生産能力を倍増させるという同社の計画を支えるための重要な拠点となります。これまで試作機や小規模な生産に留まっていたeVTOL開発が、いよいよ本格的な量産を見据えた段階に入ったことを示す象徴的な動きと言えるでしょう。
航空宇宙と自動車、二つの生産技術の融合
eVTOLの生産は、従来の航空機製造とは異なる課題を抱えています。航空機としての極めて高い安全性や品質保証が求められる一方で、将来の普及のためには自動車産業のような効率的な量産技術とコスト管理が不可欠となります。Joby社には日本のトヨタ自動車も出資しており、トヨタ生産方式(TPS)のノウハウが生産準備に活かされていると見られています。今回の新工場も、安全性と量産効率を両立させるための先進的な生産ラインが構築されるものと推測されます。これは、異なる業種の知見をいかに融合させ、新たなものづくりへと昇華させるかという、製造業にとって普遍的なテーマを体現する事例です。
製造拠点としての米・中西部の再評価
今回、拠点が設けられたオハイオ州は、かつて「ラストベルト(錆びついた工業地帯)」の一部とされましたが、近年はEVや半導体など先端製造業の集積地として再び注目を集めています。長年にわたって培われた製造業の基盤、熟練した労働力、そして州政府による積極的な誘致策が、Jobyのような新興企業を惹きつけていると考えられます。これは、日本の地方における製造業の拠点維持や、新たな産業誘致を考える上でも参考になる点かもしれません。
日本の製造業への示唆
今回のJoby社の動きは、日本の製造業関係者にとってもいくつかの重要な示唆を含んでいます。
1. 新産業における量産化の加速:
eVTOLのような未来のモビリティと目される分野でも、事業化に向けた具体的な生産投資が始まっています。自社の持つ素材、部品、加工技術、あるいは生産管理システムが、こうした新しい市場でどのように貢献できるか、早期に検討し、準備を進めることの重要性が増しています。
2. 異業種技術の融合による新たな価値創造:
eVTOLの機体は、複合材成形、モーター、バッテリー、精密制御システムなど、日本の製造業が得意とする技術の集合体です。航空宇宙分野の厳格な品質管理と、自動車分野の量産ノウハウを併せ持つサプライヤーには、大きな事業機会が生まれる可能性があります。
3. サプライチェーンへの参入機会:
新しい産業の量産化は、新たなサプライチェーンの構築を意味します。完成機メーカーだけでなく、その周辺の部品供給、製造装置、検査機器、そして保守・運用サービスに至るまで、幅広い領域でビジネスチャンスが生まれます。自社の強みを的確に捉え、この新しいエコシステムに参画する道筋を描くことが求められます。


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