海外メーカーのISO 9001認証取得から考える、グローバル品質保証の現在地

global

先日、中国の化学メーカーであるKima Chemical社が品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の認証を取得したと報じられました。この一見すると個別のニュースは、日本の製造業がグローバルなサプライチェーン管理や自社の競争力を考える上で、重要な示唆を含んでいます。

海外サプライヤーにおける品質マネジメントの標準化

中国のセルロースエーテルメーカーがISO 9001認証を取得したというニュースは、もはや珍しいものではありません。しかしこれは、特定の先進的な企業だけの動きではなく、中国をはじめとする海外の製造業全体で、国際標準に準拠した品質マネジメントシステム(QMS)の導入が一般化している潮流の現れと捉えるべきでしょう。かつて一部で懸念されたような品質管理の未整備といった状況は過去のものとなりつつあり、多くの企業が体系的なQMSを構築・運用することが事業継続の前提条件となっているのが実情です。

日本の製造業にとって、海外から部材や原料を調達する際、サプライヤーがISO 9001のような国際認証を取得していることは、取引を開始するための重要な選定基準の一つとなります。これは、品質に対する共通言語を持つ相手であるという最低限の信頼性を担保する上で、依然として有効な指標であると言えます。

認証の「実態」を見極める実務の重要性

一方で、実務に携わる私たちは、認証の取得が必ずしも現場での高い品質レベルを保証するものではないことも経験的に理解しています。認証取得が目的化し、実際の業務と乖離した文書管理に終始してしまう「形骸化」のリスクは、残念ながら国内外を問わず存在します。特に、海外サプライヤーと取引を行う際には、認証の有無だけでなく、その品質マネジメントシステムが現場でいかに機能しているかを見極めることが極めて重要です。

例えば、サプライヤー監査の際には、文書の整合性だけでなく、是正・予防処置のプロセスが実効性を伴って回っているか、内部監査が形式的でなく改善の機会として活用されているか、現場の作業者が品質方針や自身の役割を理解しているかといった、運用の実態にまで踏み込んで確認する必要があります。認証はあくまで「品質を管理する仕組みがある」ことの証明であり、その仕組みから生み出される「品質そのもの」は、こうした地道な確認作業を通じて評価すべきものだからです。

変化する「品質」の競争優位性

海外メーカーがISO 9001のような標準的な品質マネジメントの「型」を身につけてくる中で、これまで日本の製造業が強みとしてきた「品質の高さ」という優位性の源泉も、見直しを迫られているのかもしれません。仕組みとしての品質保証がグローバルスタンダードになるということは、その土俵で戦うだけでは差別化が困難になることを意味します。

これからの日本の製造業における品質の強みとは、標準化されたマネジメントシステムを基盤としつつ、その上に築かれるものでしょう。それは、現場の作業者一人ひとりの改善意識に根差したボトムアップの活動であったり、設計開発の源流段階で品質を作り込む緻密さであったり、あるいは特定の加工技術における高度なノウハウであったりするはずです。国際標準への準拠は当然のこととして、その先にある本質的な競争力とは何かを、各社が自問すべき時期に来ていると言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のニュースから、私たちは以下の点を実務への示唆として読み取ることができます。

1. サプライヤー管理の深化:
海外サプライヤーの選定・評価において、ISO 9001認証の有無を初期スクリーニングとして活用しつつ、その運用実態をより深く評価する視点が不可欠です。定期的な監査やコミュニケーションを通じて、品質マネジメントシステムが現場で実効性を伴って機能しているかを確認し、信頼できるパートナーシップを構築することが求められます。

2. 自社QMSの再点検:
海外の競合やサプライヤーが品質管理レベルを標準化してきていることを踏まえ、自社の品質マネジメントシステムが形骸化していないか、継続的改善のエンジンとして有効に機能しているかを改めて見直す良い機会です。「認証を維持するため」の活動に陥ることなく、事業貢献に繋がる実質的な活動となっているか、問い直す必要があります。

3. 新たな競争優位の構築:
標準的な品質保証体制がもはや差別化要因になりにくい時代において、自社の真の強みはどこにあるのかを再定義することが重要です。現場の改善力、設計品質、固有技術など、模倣されにくい本質的な価値を明確にし、それを磨き続けることが、グローバル市場での持続的な競争力を確保する鍵となるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました