米製造業で発生した資材盗難事件から、自社のセキュリティ体制を再考する

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先日、米ユタ州の製造会社で「軍用グレードのアルミニウム」が盗まれるという事件が報じられました。これは対岸の火事ではなく、資材価格が高騰する中で、日本の製造現場においても十分に起こりうる事態です。本件を機に、自社の資産である資材の管理体制について改めて見直す必要があります。

事件の概要:高付加価値材が狙われる現実

報道によれば、米国ユタ州レイトンにある製造会社から、2つの大きな「軍用グレードのアルミニウム」が盗まれ、夫婦がその容疑で起訴されたとのことです。記事自体は短いものですが、この「軍用グレード」という言葉が示唆するように、盗難の対象となったのは、一般的な材料ではなく、特殊な用途に使われる高価で付加価値の高い資材であったと推測されます。このような資材は、少量であってもその被害額は大きくなり、企業の経営に直接的な打撃を与えかねません。

日本の製造現場におけるリスク

この事件は、日本の製造業にとっても決して他人事ではありません。近年、世界的な需要増や地政学的リスクの高まりから、アルミニウムや銅をはじめとする非鉄金属、あるいは特殊鋼などの価格は高騰を続けています。こうした状況は、工場内に保管されている資材の資産価値が上昇していることを意味し、結果として盗難のリスクを高める要因となります。

特に、日本の製造業が得意とする高機能・高付加価値製品の分野では、研究開発段階の試作品や、少量多品種生産で使われる特殊合金、高純度材料などを扱う機会が少なくありません。これらの資材は、その価値を知る者にとっては格好の標的となり得ます。犯行は外部からの侵入者に限らず、工場の内部事情に詳しい関係者や元従業員によって行われる可能性も常に念頭に置くべきでしょう。

求められる管理体制の再点検

このようなリスクに対し、我々は自社のセキュリティ体制を改めて見直す必要があります。対策は、物理的な防犯と管理面の両輪で考えることが重要です。

まず物理的な対策としては、監視カメラの設置や増設、夜間照明の確保、施錠管理の徹底といった基本的な項目が挙げられます。しかし、カメラに死角はないか、録画データは適切に管理されているか、合鍵の管理ルールは形骸化していないかなど、運用の実態を定期的に点検することが肝要です。

さらに重要なのが、管理面での対策です。具体的には、以下のような点が挙げられます。

  • 厳格な在庫管理と棚卸:帳簿上の在庫と実在庫を定期的に照合することで、紛失や盗難を早期に発見できます。特に高価な資材については、保管場所を限定し、より頻繁な確認を行うべきです。
  • アクセス管理の徹底:資材保管庫や特定のエリアへの入退室を記録し、権限のない者の立ち入りを制限する仕組みは有効です。ICカードによる管理なども選択肢となるでしょう。
  • 持ち出しルールの明確化と運用:製品や仕掛品だけでなく、スクラップ(切り粉や端材)の持ち出しについても明確なルールを定め、その運用を徹底することが求められます。価値のある資材がスクラップに偽装されて持ち出されるケースも想定すべきです。
  • 従業員への教育:会社の資産を守る意識を醸成するとともに、不審な行動を見かけた際の報告ルートを周知しておくことも、内部からの牽制機能として働きます。

性善説に頼るだけでなく、常に最悪の事態を想定し、客観的な視点で自社の管理体制の脆弱性を洗い出す姿勢が、今日の工場運営には不可欠と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の米国の事件から、我々が学ぶべき要点は以下の通りです。

1. 資材は「現金」と同等の資産であるとの再認識:
資材価格の高騰により、工場内にある在庫は以前にも増して価値の高い経営資産となっています。その価値に見合った管理レベルが求められていることを、経営層から現場まで全ての階層で共有する必要があります。

2. 狙われるのは「高付加価値材」:
一般的な資材はもちろん、特に試作品や特殊用途向けの材料は、少量でも被害が大きくなるため、重点的な管理対象とすべきです。保管場所の分離や、より厳格な在庫管理が求められます。

3. 物理的対策と管理的対策の組み合わせが不可欠:
監視カメラや施錠といった物理的な「壁」に加え、在庫管理や入退室管理といった「仕組み」を組み合わせることで、初めて実効性のあるセキュリティが実現します。どちらか一方に偏ることなく、バランスの取れた対策を講じることが重要です。

4. 「内部からのリスク」への備え:
工場の事情をよく知る内部関係者による犯行は、外部からの侵入よりも防ぐのが難しい場合があります。職場の規律を維持し、誰もがルールを守るという当たり前の文化を醸成することが、結果として内部不正の抑止力となります。

今回の事件を一過性のニュースとして捉えるのではなく、自社の資産を守り、安定した生産活動を継続するための「生きた教訓」として、現場の管理体制を見直す良い機会とすべきでしょう。

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