ロシア製造業の景況感、悪化が鮮明に – PMIは7ヶ月連続で50割れ

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ロシアの製造業の景況感を示す購買担当者景気指数(PMI)が、2022年12月に48.1へと低下し、7ヶ月連続で好不況の節目である50を下回りました。この水準はウクライナ侵攻直後の2022年3月以来の速いペースでの悪化を示しており、同国の製造業が直面する厳しい状況を浮き彫りにしています。

ロシア製造業PMI、7ヶ月連続で活動縮小を示す

S&Pグローバルが発表したロシアの2022年12月製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.1となり、11月の48.3からさらに低下しました。PMIは50を上回ると景気拡大、下回ると景気後退を示す指標であり、これで7ヶ月連続の50割れとなったことになります。今回の数値は、ウクライナ侵攻が始まった直後の2022年3月以来、最も速いペースでの悪化を示しており、景況感の冷え込みが加速している様子がうかがえます。

景況感悪化の背景にある複合的な要因

この景況感の悪化は、単一の要因によるものではなく、複数の課題が絡み合っているものと推察されます。西側諸国による経済制裁の長期化は、部品や原材料の調達を困難にし、サプライチェーンに深刻な影響を与えていると考えられます。また、軍事動員に伴う労働力不足や、国内需要の冷え込みも、生産活動の足かせとなっている可能性があります。製造業の現場から見れば、生産計画を立てる上で不可欠な「安定した部材調達」と「見通せる需要」の両方が揺らいでいる状況と言えるでしょう。

グローバル経済とサプライチェーンへの影響

ロシアの製造業の動向は、対岸の火事として片付けられる問題ではありません。同国はエネルギー資源やニッケル、パラジウムといった工業用金属の主要な供給国であり、その生産活動の停滞は、国際的な市況や供給網に影響を及ぼす可能性があります。直接ロシアとの取引がない日本企業であっても、原材料価格の高騰や、取引先が利用する部品の供給不安といった形で、間接的な影響を受けるリスクは常に存在します。地政学的な変動が、我々のものづくりに直結する経営課題であることを改めて認識させられるデータと言えます。

日本の製造業への示唆

今回のロシアのPMI悪化のニュースは、日本の製造業に携わる我々にとって、いくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. サプライチェーンの脆弱性再点検と代替調達先の確保:
特定の国や地域に依存したサプライチェーンは、地政学リスクに対して脆弱です。自社の調達網を再点検し、ティア1(一次サプライヤー)だけでなく、ティア2、ティア3に至るまでリスクを可視化することが求められます。その上で、平時から代替調達先の検討や複数購買化を進めておくことの重要性が増しています。

2. 地政学リスクを前提とした事業継続計画(BCP)の見直し:
特定の国からの供給途絶や、それに伴う世界的な市場の混乱は、もはや「想定外」の事象ではありません。こうしたシナリオを事業継続計画(BCP)に具体的に盛り込み、机上訓練などを通じて、いざという時に機能するかを定期的に検証しておく必要があります。

3. グローバルな情報収集体制の強化:
世界各国の経済指標や政治情勢が、自社の事業にどのような影響を及ぼしうるかを常に監視し、分析する体制が不可欠です。今回のようなPMIの動向も、単なる経済ニュースとしてではなく、自社の事業環境を読み解くための一つの重要なインプットとして活用していくべきでしょう。

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