サービス業の成功事例に学ぶ「生産管理」の本質とは

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あるイベント制作会社が、年間70件近いプロジェクトを成功させた要因として「プロダクションマネジメント(生産管理)」を挙げました。一見、製造業とは異なる分野の事例ですが、ここには我々が改めて認識すべき、プロセスと人材に関する重要な示唆が含まれています。

はじめに:異業種における「生産管理」の視点

先日、海外のイベント制作会社経営者であるJulia Truong氏のSNS投稿が目に留まりました。彼女のチームが年間70件近い大小様々なイベントを成功裏に終えたことへの感謝を綴ったものでしたが、その成功の要因として「チームの情熱や才能」と並べて、「プロセス(Process)」、すなわち「プロダクションマネジメント(Production Management)」の重要性を強調していた点が非常に興味深く感じられました。

イベント制作は、創造性や顧客ごとの個別対応が求められるサービス業であり、我々製造業の量産ラインとは性質が異なると考えがちです。しかし、この事例は、業種を問わず、体系化された「生産管理」の考え方がいかに強力な武器となりうるかを示唆しています。

「人」の能力を最大限に引き出す「プロセス」の役割

投稿の中で Truong氏は、「サービス業では人がすべてである」と述べています。これは、製造現場においても多くの管理者が実感するところでしょう。熟練技能者の技術、チームの結束力、個々の従業員の改善意識なくして、良いものづくりは成り立ちません。

しかし、彼女が同時に強調しているのは、その「人」の力を安定的に、かつ最大限に引き出すための「プロセス」の存在です。個人の能力やその場の頑張りに依存するだけでは、品質にばらつきが生じたり、予期せぬトラブルへの対応が遅れたりするリスクが常に伴います。これは、製造業における「属人化」の課題と全く同じ構造です。

イベント制作におけるプロセスとは、おそらくタスクの洗い出し、役割分担、スケジュール管理、予算管理、リスクの事前評価、そして成果物のチェックリストといった、体系的な管理手法を指すのでしょう。これらは、我々の現場で日々実践されている生産計画、工程管理、品質管理の手法と本質的に何ら変わりありません。

一貫性・品質・効率性を担保する仕組みづくり

この投稿では、プロセスがもたらす価値として、「一貫性(consistency)、品質(quality)、効率性(efficiency)」が挙げられています。これは、製造業の経営の根幹をなすQCD(品質・コスト・納期)の考え方と見事に重なります。

毎回ゼロから手探りで仕事を進めるのではなく、標準化された業務プロセスという土台があるからこそ、人は安心して本来注力すべき創造的な部分や、イレギュラーな事態への対応に集中できます。標準作業がなければ改善もない、という製造業の原則が、サービス業の現場でも同様に機能している証左と言えるでしょう。

むしろ、一つひとつの製品が特注品に近い「多品種少量生産」や、設計・開発といった非定型業務の多い職場ほど、このようなプロセスの重要性は増すのかもしれません。しっかりとした拠り所となる標準プロセスを確立することが、結果として組織全体の柔軟性と対応力を高めることに繋がるのです。

日本の製造業への示唆

この異業種の事例から、我々日本の製造業はいくつかの重要な点を再確認することができます。

1. 生産管理手法の普遍的な価値
我々が長年かけて培ってきた生産管理や品質管理の考え方は、製造現場に閉じたものではなく、極めて普遍的で強力な経営手法です。この自社の強みを再認識し、製造部門だけでなく、設計、営業、管理部門といったあらゆる業務の効率化に応用する視点を持つことが重要です。

2. 「人とプロセス」は両輪であること
優れた人材の能力や経験は組織の貴重な財産です。しかし、その価値を最大限に引き出し、組織全体の力として定着させるには、個人の暗黙知を形式知へと転換し、誰もが実践できる「プロセス」に落とし込む努力が不可欠です。人とプロセスは対立するものではなく、互いを高め合う両輪の関係にあります。

3. 非定型業務への体系的アプローチ
日々の改善活動、試作品開発、あるいは部門を横断するプロジェクトなど、定型化しにくいと思われている業務にこそ、生産管理の体系的なアプローチ(目的設定、計画、実行、評価、改善)を導入する余地が多く残されています。これにより、業務の透明性が高まり、成果の再現性も向上するでしょう。

ともすれば我々は、自らの知識や手法を特定の業界や職場の中だけで捉えがちです。しかし、今回のような異業種の事例に目を向けることで、自らの活動の価値を再発見し、新たな改善のヒントを得ることができるのではないでしょうか。

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