米国で、工場建設など大規模プロジェクトの許認可プロセスを迅速化する法案が下院を通過しました。この動きは、CHIPS法などによる巨額の補助金政策と連動し、米国内の製造業投資を実質的に後押しするものであり、日本の製造業にも影響を与えうる重要な動向です。
米国で進む、製造業投資の「実行」を支える法整備
先日、米国の全米製造業者協会(NAM)は、「SPEED Act」法案が下院を通過したことを歓迎する声明を発表しました。この法案の核心は、工場建設やインフラ整備といった大規模プロジェクトに伴う許認可プロセスを改革し、その期間を短縮することにあります。製造業の現場では、新たな投資を決断しても、実際に着工に至るまでの行政手続きに多くの時間を要することが少なくありません。米国は、この時間的な障壁を取り除くことで、国内の製造業投資をさらに加速させようとしています。
大規模投資を後押しする背景
この動きの背景には、CHIPS法(半導体関連投資の促進)やインフレ抑制法(IRA、EVや再生可能エネルギー分野への投資優遇)といった、近年の米国における一連の産業政策があります。政府が巨額の補助金を用意して企業の国内投資を促していますが、その受け皿となる工場建設が許認可の遅れによって滞ってしまっては、政策の効果が十分に発揮されません。
つまり、今回の法案は「資金的な支援」と、プロジェクト実行を円滑にする「実務的な支援」を両輪で進めるという、米国の強い意志の表れと見ることができます。製造業の競争力強化は、単に資金を投じるだけでなく、事業活動をしやすい環境をいかに整備するかが重要であるという、実践的な考え方に基づいていると言えるでしょう。
日本の製造業から見た視点
この米国の動向は、我々日本の製造業にとってもいくつかの重要な視点を提供してくれます。まず、米国での事業展開や工場建設を計画している企業にとっては、許認可プロセスの迅速化は追い風となります。計画の予見性が高まり、投資リスクの低減につながる可能性があるからです。特に大規模な設備投資を伴うプロジェクトでは、着工までの期間短縮は大きなメリットとなります。
一方で、これはグローバルな製造拠点としての競争が、新たな段階に入っていることも示唆しています。コストや品質、技術力に加え、「いかに迅速に事業を立ち上げられるか」というスピード感が、立地選定の重要な要素になりつつあります。翻って日本国内を見れば、昨今の半導体工場の誘致など、大規模な投資案件が進行しています。こうした国内プロジェクトにおいても、許認可プロセスの効率性は、国際的な競争力を左右する重要な論点となることは間違いありません。各種申請手続きの煩雑さや関係各所との調整に要する時間は、我々が常に直面する課題の一つです。
日本の製造業への示唆
今回の米国の法案可決から、日本の製造業関係者が留意すべき点を以下に整理します。
1. 政策と実務の両輪が重要:米国の製造業強化策は、補助金などの「アメ」だけでなく、許認可の迅速化という「実行環境の整備」がセットになっています。これは、国内への投資誘致や産業振興を考える上で、日本も見習うべき点かもしれません。
2. 海外進出計画への影響:米国への投資を検討している企業は、この法改正の動向を注視すべきです。許認可プロセスの透明化・迅速化が進めば、事業計画の精度を高め、より迅速な市場投入が可能になる可能性があります。
3. 国内事業環境の再点検:グローバルなサプライチェーン再編が進む中、国内での生産能力増強も重要な経営課題です。自社の設備投資計画において、行政手続きがボトルネックになっていないか、改めて見直すきっかけとなるでしょう。また、国や自治体に対して、より円滑な事業環境の整備を働きかけていくことも重要です。


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