大手製薬BMSに学ぶ、バイオ医薬品の製造・開発におけるパートナーシップの新たな役割

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バイオ医薬品という最先端分野において、研究開発から製造プロセスに至るまで、外部パートナーとの連携がますます重要性を増しています。大手製薬会社ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)の幹部へのインタビューから、現代の製造業におけるサプライチェーン連携のあり方を探ります。

複雑化するバイオ医薬品と製造プロセス

近年、医薬品業界では抗体医薬や遺伝子治療薬に代表されるバイオ医薬品の開発が主流となっています。これらの医薬品は、化学合成によって製造される従来の低分子医薬品とは異なり、生きた細胞を用いて目的のタンパク質などを生産させるという、極めて複雑なプロセス(バイオプロセシング)を必要とします。細胞の培養から精製、製剤化に至る各工程では、高度な専門技術とノウハウ、そして厳格な品質管理が不可欠です。それに伴い、設備投資は巨額になり、開発期間も長期化する傾向にあります。これは、製品の高機能化や製造プロセスの複雑化に直面している他の製造業の皆様にとっても、決して他人事ではない状況と言えるでしょう。

自前主義からの脱却と戦略的パートナーシップ

こうした背景の中、大手製薬会社ブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)で製品開発を率いるマニーシャ・P・デサイ氏が指摘するように、外部の専門組織との「パートナーシップ」が決定的に重要な役割を担うようになっています。かつては、製薬会社が研究開発から製造、販売までを一貫して自社で手掛ける「自前主義」が主流でした。しかし、すべての工程で最先端の技術と設備を維持し続けることは、BMSのような巨大企業にとっても現実的ではありません。そこで、医薬品開発業務受託機関(CRO)や医薬品開発製造受託機関(CDMO)といった、特定の分野に特化した専門企業との連携を深める動きが加速しています。

この動きは、単なるコスト削減を目的とした業務のアウトソーシングとは一線を画します。むしろ、最先端の専門知識や技術を迅速に取り入れ、開発スピードを向上させること、あるいは複数のパートナーと連携することで製造におけるリスクを分散させることなど、より戦略的な目的を持っています。自社の強みである創薬や製品開発のコア部分に経営資源を集中させ、それ以外の部分は最も優れた技術を持つパートナーに委ねるという、いわば「オープンイノベーション」をサプライチェーン全体で実践しているのです。

求められるパートナーシップの質的変化

パートナーシップの重要性が増すにつれて、その関係性も変化しています。従来のような「発注者」と「受注者」という一方的な関係ではなく、対等な立場で知見を交換し、共に課題解決にあたる、より緊密な協業関係が求められるようになっています。例えば、製造プロセスの開発段階からCDMOの技術者が深く関与し、量産化を見据えた最適なプロセスを共同で構築する、といった事例が増えています。そのためには、技術情報や品質データをオープンに共有し、サプライチェーン全体で品質と効率を最適化していくという思想が不可欠です。これは、日本の製造業における従来の系列や下請けといった関係性を見直し、より付加価値の高いサプライチェーンを構築していく上でも、重要な視点と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

バイオ医薬品業界におけるパートナーシップの深化は、日本の製造業全体にとっても多くの示唆を与えてくれます。以下に要点を整理します。

1. コア技術への集中とオープン化の推進:
全ての技術を自社で抱え込む「自前主義」の限界を認識し、自社の真の強み(コア・コンピタンス)は何かを改めて見極める必要があります。その上で、専門性の高い外部パートナーの知見を積極的に活用し、開発・製造のスピードと質を向上させるオープンな姿勢が、今後の競争力を左右します。

2. サプライヤーから「パートナー」への関係再構築:
サプライヤーをコストや納期の観点だけで評価するのではなく、技術力や課題解決能力を持つ「パートナー」として捉え直すことが重要です。技術情報を共有し、共同でプロセス改善や品質向上に取り組むなど、より深く、対等な関係を構築することが、サプライチェーン全体の強靭化に繋がります。

3. 外部連携を前提とした品質保証体制の構築:
外部への委託が増えるほど、品質保証のあり方も変化させる必要があります。最終製品の検査だけでなく、パートナーの製造工程における品質データをリアルタイムで共有・監視する仕組みや、共同で品質課題の原因究明と対策を行う体制の構築が求められます。サプライチェーン全体を一つの工場と見なすような、より包括的な品質管理思想が不可欠となるでしょう。

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