韓国の製造業スタートアップ事例に学ぶ、成長初期における組織づくりの要点

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韓国の経済誌が報じた製造業スタートアップ「MS産業」は、2024年に売上60億ウォン(約6.6億円)を達成しました。同社の「生産・管理・営業」というシンプルな組織構造から、日本の製造業、特に中小企業や成長段階にある企業が参考にできる組織運営の要諦を考察します。

韓国・MS産業の概要と組織構造

韓国の経済誌「韓国経済マガジン」によると、富川(プチョン)産業振興庁の支援プログラムに選ばれたスタートアップの一つであるMS産業は、2024年に売上高60億ウォン(1ウォン=0.11円換算で約6.6億円)のマイルストーンを達成したとのことです。特筆すべきは、同社の組織が「生産(Production)」「管理(Management)」「営業(Sales)」という3部門で構成されている点です。これは、事業の根幹をなす機能を明確に分けた、非常にシンプルで分かりやすい組織形態と言えるでしょう。

成長初期におけるシンプルな組織の利点

「良いものを作り(生産)、それを顧客に届け(営業)、事業全体を支える(管理)」という三つの機能は、製造業の根幹を成すものです。MS産業が採用するこの組織形態は、特に事業の立ち上げ期や成長初期において、多くの利点をもたらします。部門の役割が明確であるため、従業員は自身の責任範囲を理解しやすく、経営層からの指示も伝わりやすい構造です。また、部門数が少ないため、部門間のコミュニケーションが比較的容易で、意思決定の迅速化にも繋がります。日本の多くの中小製造業においても、創業期には社長が営業と管理を兼任し、工場長が生産全体を統括するといった、同様の機能分担からスタートした経験をお持ちの企業は少なくないはずです。事業の基盤を固める段階では、こうしたシンプルな組織が有効に機能すると考えられます。

事業規模拡大に伴う組織の課題

一方で、売上高が10億円、20億円と拡大していく過程では、このシンプルな組織構造が成長の足かせとなる可能性も出てきます。例えば、「生産」部門の中に、製造、生産技術、品質管理、購買といった多様な機能が混在している場合、事業規模の拡大に伴い、それぞれの専門性を高める必要に迫られます。品質要求が高度化すれば専門の品質保証部門が、新製品開発を加速させるためには開発部門の独立が不可欠となるでしょう。同様に、「管理」部門も経理・財務、人事・労務、総務といった機能に分化し、「営業」部門からはマーケティングや顧客サポートといった機能が派生していきます。MS産業の現在の組織は、売上6~7億円規模における一つの最適解かもしれませんが、次の成長ステージに進むためには、機能の分化と組織の再設計が重要な経営課題となってくることが予想されます。これは、日本の製造業が「10億円の壁」や「30億円の壁」などと表現する成長の踊り場で直面する、普遍的な課題でもあります。

日本の製造業への示唆

今回の韓国企業の事例から、日本の製造業、特に経営層や管理職の方々が得られる示唆を以下に整理します。

1. 事業の原点に立ち返る組織論
企業の成長と共に組織は複雑化しがちですが、「生産・管理・営業」という事業の基本機能に立ち返って自社の組織を見直すことは有益です。各部門が本来の役割を果たせているか、部門間の連携は円滑か、といった基本的な問いかけが、組織課題の発見に繋がります。

2. 組織は事業ステージに応じて変化させるもの
現在の組織構造が、将来の成長にとって最適とは限りません。自社の事業規模や市場環境、戦略に合わせて、組織は柔軟に見直していく必要があります。特に中小企業においては、成長の節目で組織再編を計画的に実行することが、持続的な発展の鍵となります。

3. 機能分化と権限移譲のタイミング
事業が拡大する中で、経営者や工場長が一人で担っていた役割を、専門部署や担当者に権限移譲していくタイミングの見極めが重要です。品質保証、生産技術、人事といった専門機能を持つ部署をいつ設立するかは、経営の重要な意思決定事項です。その判断が、企業の専門性と組織能力を大きく左右します。

4. 多能工化と専門性のバランス
シンプルな組織では、一人の従業員が複数の役割を担う多能工的な人材が育ちやすいという利点があります。しかし、企業の成長には、特定の分野を深く追求する専門人材も不可欠です。事業戦略と連動させながら、どのような人材を、どのように育成していくかという計画的な視点が求められます。

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