食品大手のモンデリーズ・インターナショナルは、再生プラスチックを包装材に採用する取り組みを加速させています。本記事では、品質のばらつきという再生材特有の課題を、既存の生産設備を活用しながらいかに克服し、量産化を実現したのか、その具体的なアプローチを解説します。
はじめに:大手食品メーカーの挑戦とその背景
世界的な食品メーカーであるモンデリーズ・インターナショナル社は、持続可能な包装材への移行を積極的に進めています。同社は、2025年までにバージン(新品)プラスチックの使用量を5%削減するというグローバル目標を掲げていましたが、欧州ではこの目標を2年前倒しで達成したと発表しました。この背景には、欧州連合(EU)でのプラスチック税の導入や、環境意識の高い消費者からの要請など、事業環境の大きな変化があります。
同社は主力ブランドである「キャドバリー」の包装材に、最大30%の再生プラスチック(リサイクルPET)を混合して使用する取り組みを大規模に展開しています。これは、循環型経済(サーキュラーエコノミー)の実現に向けた具体的な一歩であり、我々日本の製造業にとっても注目すべき事例と言えるでしょう。
再生材利用における現場の技術的課題
再生材の利用拡大において、製造現場が直面する最も大きな課題の一つが、その品質のばらつきです。新品のバージン材とは異なり、再生プラスチックは原料の由来や再生プロセスによって、厚み、柔軟性、強度といった物性が一定ではありません。特に、高速で稼働する包装ラインにおいて、フィルム物性のわずかな違いは、機械の停止やシール不良、製品の外観不良といった問題に直結します。
モンデリーズ社の現場でも、当初はこの品質のばらつきに起因する生産性の低下が懸念されました。再生材を既存の包装ラインにそのまま流しただけでは、安定した生産は望めません。この課題を乗り越えることこそが、再生材の本格導入に向けた鍵となりました。
課題解決へのアプローチ:既存設備の活用とサプライヤー連携
モンデリーズ社は、この技術的課題に対して、大規模な設備投資を行うのではなく、既存の資産を最大限に活用する堅実なアプローチを選択しました。その要点は、以下の3つに整理できます。
1. サプライヤーとの緊密な連携
まず、再生材を供給するサプライヤーと密に連携し、包装ラインで安定して使用できる品質仕様を共同で定義しました。材料の物性データを共有し、許容できるばらつきの範囲を明確にすることで、受け入れ品質の安定化を図ったのです。これは、サプライヤーを単なる調達先ではなく、課題解決のための技術パートナーと位置づける、現代的なサプライチェーン管理の好例です。
2. 既存包装ラインの微調整(再キャリブレーション)
次に、新しい包装機を導入するのではなく、既存の設備の運転条件を再生材の特性に合わせて微調整することに注力しました。具体的には、フィルムを送り出す際の張力(テンション)、ヒートシール時の温度や圧力、時間といったパラメータを最適化する作業です。現場の技術者が持つ知見と経験を活かし、トライアンドエラーを繰り返しながら、最適な条件を見つけ出しました。これにより、追加の設備投資を抑制しつつ、再生材への対応を実現しました。
3. 段階的なスケールアップ
いきなり全工場で導入するのではなく、まずは一つの生産ラインで試験的に導入し、そこで得られた知見や成功事例をモデルケースとしました。生産性や品質に関するデータを確実に収集・分析し、課題を洗い出した上で、他のラインや工場へと水平展開していきました。この段階的なアプローチは、リスクを管理しながら着実に成果を拡大していく上で非常に有効です。
日本の製造業への示唆
モンデリーズ社の事例は、環境対応と生産活動の両立を目指す日本の製造業にとって、多くの実務的な示唆を与えてくれます。
・サプライヤーとの戦略的パートナーシップ構築の重要性
再生材のような新しい材料を導入する際は、品質の安定化が成否を分けます。そのためには、価格交渉だけでなく、技術的な課題を共有し、共に解決策を探るパートナーとしてサプライヤーとの関係を再構築することが不可欠です。品質管理部門や購買部門は、サプライヤーの製造工程まで踏み込んだ協力体制を築く必要があります。
・既存設備の能力を最大限に引き出す現場力
環境対応は、必ずしも大規模な設備投資を必要とするわけではありません。既存の設備が持つポテンシャルを、現場の知恵と工夫で最大限に引き出すことが重要です。生産技術者や現場リーダーは、自社の設備の特性を深く理解し、パラメータの最適化や治具の改善といった地道なカイゼン活動を通じて、新たな課題に対応する力が求められます。
・着実な導入計画(スモールスタートと横展開)
新しい取り組みを導入する際には、リスクを最小限に抑えるための計画性が重要です。特定のラインや製品でパイロット導入を行い、そこで技術的な課題やコスト、運用上の注意点を十分に検証してから全社展開する「スモールスタート」のアプローチは、再生材の利用に限らず、DXや自動化など様々な変革に応用できる普遍的な手法と言えるでしょう。
今後、日本においても環境規制の強化や市場からの要請はますます高まることが予想されます。その中で、持続可能なモノづくりを実現するためには、今回のような先進事例から学び、自社の状況に合わせて地道な技術開発とプロセス改善を積み重ねていく姿勢が不可欠です。


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