海外製造業の最新動向:関税、ロボット活用、サプライチェーンにおける盗難リスク

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海外の製造業関連ニュースから、日本の皆様に関わりの深いトピックを解説します。今回は、米国の関税政策が国内回帰(リショアリング)に与えた影響、協働ロボットによる生産性向上の実例、そして深刻化するサプライチェーン上の盗難問題という、三つの異なる側面から最新の動向を探ります。

米国の関税政策とリショアリングの誤算

まず、米国の通商政策が製造業の生産拠点戦略に与えている影響です。先日、米連邦最高裁判所は、トランプ前政権時代に導入された鉄鋼・アルミニウム製品に対する追加関税(通商拡大法232条に基づく措置)を支持する判断を下しました。この決定は、関税の撤廃や緩和を期待して米国内に生産拠点を戻した(リショアリング)一部の企業にとって、大きな誤算となったようです。「リショアリングの後悔」という言葉も聞かれます。

この背景には、高い関税によって輸入品の価格が上昇し、国内生産が有利になるとの期待がありました。しかし、関税が維持されたことで、原材料コストの上昇分が価格に転嫁され、結果的に国内生産のコスト競争力が損なわれるという皮肉な状況が生まれています。この一件は、政府の政策変更という外部要因が、長期的な視点での設備投資や拠点戦略にいかに大きな影響を及ぼすかを示す事例と言えるでしょう。日本企業においても、海外拠点やサプライヤーの選定にあたり、各国の通商政策や地政学リスクをより慎重に評価する必要性が高まっていることを示唆しています。

協働ロボット導入による生産性向上の実践例

次に、生産現場における自動化の話題です。英国の大手食品メーカーであるPremier Foods社が、製品の箱詰めとパレット積みを行う梱包ラインに協働ロボット(コボット)を導入し、生産性を2倍に向上させたと報じられています。この事例の興味深い点は、大規模な設備変更を伴わずに、既存のラインに柔軟に組み込める協働ロボットを活用したことです。

日本の製造現場においても、人手不足は深刻な課題であり、特に中小企業では自動化への投資が大きな経営判断となります。協働ロボットは、人と同じ空間で作業できる安全性や、比較的導入・設定が容易であるといった特長から、これまで自動化が難しかった工程への適用が期待されています。特定の工程のボトルネックを解消するだけでも、ライン全体の生産性が大きく向上する可能性があることを、この英国の事例は具体的に示しています。自社のどの工程に適用可能か、費用対効果を検討してみる価値は十分にあるでしょう。

深刻化するサプライチェーン上の貨物盗難リスク

最後に、これまであまり注目されてこなかったサプライチェーン上のリスクについてです。食品大手のネスレをはじめとする複数の企業が、組織的な貨物盗難の被害に遭っていることが明らかになりました。特に食品や飲料は換金しやすいため、犯罪組織の標的になりやすいとされています。その手口は巧妙化しており、年間被害額は数億ドルに上るとの試算もあります。

パンデミックや地政学的な混乱により、サプライチェーンの脆弱性が指摘されて久しいですが、こうした「犯罪」というリスクも無視できない要素となっています。製品が工場から出荷され、顧客に届くまでの物流プロセスには、多くの人や企業が介在します。その過程でどこに脆弱性があるのかを把握し、対策を講じることが重要です。これには、GPSによる輸送状況のリアルタイム追跡、信頼できる物流パートナーの選定、そして場合によっては貨物保険の見直しといった、多角的なリスク管理が求められます。特に高付加価値品や、今回のように換金性の高い消費財を扱う企業にとっては、決して対岸の火事ではありません。

日本の製造業への示唆

今回取り上げた海外の三つの動向は、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。

1. グローバル戦略の継続的な見直し:
海外の通商政策は、予測が困難な形で変化します。特定の国への過度な依存を避け、生産拠点や調達先の多角化を図る「チャイナ・プラスワン」や「サプライチェーンの複線化」といった考え方の重要性が改めて浮き彫りになりました。短期的なコストだけでなく、地政学リスクや政策変更リスクを織り込んだ上で、グローバルな生産・供給体制を常に最適化していく視点が不可欠です。

2. 現実的な自動化・省人化の推進:
人手不足への対応は待ったなしの課題です。大規模な工場全体のスマートファクトリー化も一つの方向性ですが、英国の食品メーカーの事例のように、まずは特定の工程に協働ロボットを導入するなど、現実的で着手しやすいところから自動化を進めるアプローチも有効です。自社の課題を明確にし、費用対効果の高い技術を柔軟に取り入れていく姿勢が求められます。

3. サプライチェーン・レジリエンスの再定義:
サプライチェーンの強靭化(レジリエンス)を考える際、災害や紛争だけでなく、盗難のような犯罪リスクも想定に入れる必要があります。製品のトレーサビリティを確保し、物流プロセス全体を可視化することは、品質管理だけでなく、こうしたリスクへの備えにも繋がります。自社の製品が工場を出てから最終顧客に届くまでの流れを再点検し、潜在的なリスクを洗い出しておくことが肝要です。

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