米国、太陽光パネル輸入関税を拡大 – インド・インドネシア・ラオスが対象に。サプライチェーンへの影響は

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米商務省は、インド、インドネシア、ラオスから輸入される太陽光パネルに対し、予備的な相殺関税を課すことを発表しました。この動きは、米国内の製造業保護を目的とした一連の政策の一環とみられ、世界のサプライチェーンに新たな不確実性をもたらしています。

米国、太陽光パネルの輸入規制を強化

ロイター通信の報道によると、米国商務省はインド、インドネシア、ラオスから輸入される太陽光パネルに対して、予備的な相殺関税を課すことを決定しました。これは、これらの国々が不当な補助金によって製品を安価に輸出し、米国内の製造業者に損害を与えているという申し立てに基づく調査の一環です。今後、商務省はこれらの国からの製品が市場に不当に大量流入しているか(ダンピング)についても判断を下す予定であり、状況次第ではさらなる関税が課される可能性があります。

背景にある米国の国内産業保護政策

今回の措置は、単発の事象としてではなく、米国の製造業を保護し、国内サプライチェーンを強化しようとする大きな流れの中で捉える必要があります。これまでも米国は、中国製品に対する高関税や、東南アジアの特定国(カンボジア、マレーシア、タイ、ベトナム)を経由した中国製品の迂回輸出に対する調査を行ってきました。今回の対象国拡大は、その規制の網をさらに広げる動きと見てよいでしょう。インフレ抑制法(IRA)に代表されるように、米国はクリーンエネルギー分野においても自国での生産体制構築を強力に推進しており、貿易政策もその実現に向けた手段の一つとして活用されているのが現状です。

サプライチェーンへの影響と今後の見通し

この決定は、太陽光パネルのグローバルなサプライチェーンに直接的な影響を及ぼします。対象国からの輸入コストが増大するため、米国の太陽光発電プロジェクト事業者や輸入業者は、調達先の見直しを迫られる可能性があります。代替調達先の確保が難航すれば、パネル価格の上昇やプロジェクトの遅延につながる懸念も指摘されています。我々日本の製造業にとっても、これは対岸の火事ではありません。自社製品の部材調達や、顧客のサプライチェーンが今回の措置の影響を受ける可能性も十分に考えられます。地政学的な要因が、ある日突然、調達コストや安定供給を揺るがすリスクとして顕在化した事例と言えるでしょう。今後、商務省の最終決定が注目されますが、こうした保護主義的な動きは当面続くと考えられ、サプライチェーンの不確実性は依然として高い状況が続くと予想されます。

日本の製造業への示唆

今回の米国の決定は、日本の製造業に携わる我々にとって、いくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. サプライチェーンにおける地政学リスクの再評価:
特定の国や地域への依存度が高いサプライチェーンは、今回のような通商政策の変更によって大きな影響を受けます。自社の調達網(ティア1だけでなくティア2以降も含む)や販売網において、カントリーリスクや地政学リスクがどの程度存在するのかを改めて評価し、供給元の多元化や代替生産地の確保といったリスク分散策を具体的に検討する重要性が増しています。

2. コスト管理と規制動向の常時監視:
関税は、直接的に部材や製品の調達コストを押し上げます。突発的なコスト増に対応するためには、平時から代替調達先のコスト構造を把握しておくことや、顧客との価格転嫁に関する取り決めを見直しておくことが不可欠です。また、今回は太陽光パネルが対象でしたが、同様の動きが他の産業分野に広がる可能性も否定できません。特に米国や欧州など、主要市場の通商政策や環境規制の動向を継続的に監視し、迅速に情報収集と分析ができる体制を整えておくことが、事業の安定化に繋がります。

3. 「経済安全保障」の視点での事業戦略:
もはや、コストや品質、納期(QCD)だけでサプライチェーンを最適化する時代は終わりつつあります。今後は、経済安全保障の観点から、信頼できる国・地域との連携を深め、強靭な供給網を構築するという視点が不可欠です。自社の技術や製品が、国際的な規制の枠組みの中でどのような位置づけにあるのかを把握し、中長期的な事業戦略に織り込んでいくことが求められます。

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