米国製造業の力強い回復と政策への期待 ― 全米製造業者協会の声明が示す官民連携の重要性

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全米製造業者協会(NAM)は、米国製造業が持つ潜在能力を最大限に引き出すため、政府による政策的な障壁の撤廃を求める声明を発表しました。この動きは、活況を呈する米国製造業の現状と、さらなる成長に向けた課題を浮き彫りにしており、日本の製造業にとっても多くの示唆を含んでいます。

全米製造業者協会(NAM)、政府へ政策提言

米国の有力な業界団体である全米製造業者協会(NAM)のジェイ・ティモンズ会頭兼CEOは、一般教書演説に先立ち、米国製造業の現状と将来に関する声明を発表しました。その核心は、「政策立案者が障壁を取り除けば、製造業の可能性は無限である」という力強いメッセージです。これは、単なる要望ではなく、製造業が国家経済と安全保障の根幹であるという強い自負に基づいた、政府への具体的な行動喚起と言えるでしょう。

好調な米国製造業の現状と背景

近年の米国製造業は、半導体関連の投資を促進するCHIPS法や、クリーンエネルギー分野を後押しするインフレ抑制法(IRA)といった、大型の産業政策を追い風に活況を呈しています。海外に流出していた生産拠点の国内回帰(リショアリング)や、大規模な設備投資のニュースが相次いでいることは、日本の皆様もご存知の通りです。特に、半導体や電気自動車(EV)、バッテリーといった戦略分野におけるサプライチェーンの再構築が、この力強い動きを牽引しています。このダイナミズムは、政府の明確な意思と民間企業の投資意欲が噛み合った結果であり、我々日本の製造業としても注視すべき動きです。

成長を阻む「障壁」とは何か

NAMが「障壁」として指摘し、撤廃を求めている政策課題は、日本の製造業にとっても他人事ではありません。具体的には、以下のような点が挙げられています。

税制の問題:特に、研究開発(R&D)費の即時全額損金算入を可能にしていた税制優遇措置の復活・恒久化を強く求めています。このようなインセンティブが失効すると、企業の将来への投資意欲が減退し、国際競争力に直接影響を与えかねません。設備投資や研究開発の意思決定において、税制の予見可能性がいかに重要であるかを示しています。

過度な規制:事業活動を非効率にする様々な規制の緩和も、重要な要求事項です。環境、労働、許認可などに関する規制は、安全や公正を担保する上で不可欠ですが、その運用が硬直化すると、現場の生産性や企業の柔軟性を削いでしまいます。これは、どの国の製造業においても、常に政府と産業界が対話を続けるべきテーマです。

エネルギー政策:製造業の競争力は、安価で安定したエネルギー供給に大きく依存します。NAMは、現実的なエネルギー政策の推進を求め、エネルギーコストの高騰が国内生産の足かせになることへの懸念を表明しています。

人材不足への対応:熟練労働者の不足は、日本と同様に米国でも深刻な課題です。国内の人材育成プログラムの強化に加え、移民政策の見直しといった、より幅広い視点での解決策が議論されています。

日本の製造業への示唆

今回のNAMの声明とそれを取り巻く米国の状況は、日本の製造業に携わる我々にいくつかの重要な視点を与えてくれます。

1. 戦略的な産業政策の有効性:
政府が国の将来像を明確に描き、特定の戦略分野に対して集中的な支援を行う政策は、民間投資を喚起し、産業構造の転換を加速させる上で極めて有効です。日本の産業政策のあり方を考える上で、大いに参考になります。

2. 投資を促進する事業環境の整備:
企業の投資判断は、目先の利益だけでなく、税制や規制といった事業環境の安定性・予見可能性に大きく左右されます。特に研究開発や大規模な設備投資を促すためには、長期的な視点に立った制度設計が不可欠です。

3. 業界が一体となった意見発信の重要性:
個々の企業が努力するだけでなく、業界団体が現場の声を束ね、データに基づいた具体的な政策提言を政府に対して力強く行うことの重要性を再認識させられます。官民が健全な緊張感を保ちつつ連携し、国全体の競争力を高めていく姿勢は、日本でもさらに強化していくべきでしょう。

4. グローバルな共通課題への備え:
人材不足、エネルギーコスト、サプライチェーンの脆弱性といった課題は、もはや一国だけの問題ではありません。米国の取り組みや議論を参考にしつつ、日本の実情に合わせた、より実効性のある対策を不断に模索していく必要があります。

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