「製造オペレーティングシステム(MOS)」という新概念 ― サプライチェーン全体の連携を目指す新たなアプローチ

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北米のソフトウェア企業Nulogy社が「製造オペレーティングシステム(MOS)」というコンセプトを提唱し、注目を集めています。これは、従来のMESやERPといった個別システムとは一線を画し、自社工場から外部パートナーまでを含めた製造エコシステム全体の情報を統合管理しようとする試みです。

「製造OS」が目指すもの

Nulogy社が発表した「製造オペレーティングシステム(MOS)」は、その名の通り、製造業における包括的な「OS」としての役割を担うことを目指すものです。具体的には、生産管理、品質管理、法規制などへのコンプライアンス対応、そしてサプライヤーや委託先とのコラボレーション(協業)といった、これまで個別のシステムや部署で管理されがちだった情報を一つのシステム上で統合し、一元的に管理することを目指しています。

日本の製造現場でも、基幹システムとしてERPを導入しつつ、生産スケジューリングは専門ソフト、品質管理はExcelや独自システム、現場の進捗管理はMESといったように、複数のシステムが併存しているケースは少なくありません。MOSという概念は、これらのサイロ化された情報を繋ぎ合わせ、より円滑なオペレーションを実現するためのプラットフォームと位置づけられます。

対象は自社工場に留まらない

このシステムの興味深い点は、対象を自社の製造拠点だけでなく、受託包装業者(コパッカー)や3PL(サードパーティー・ロジスティクス)といった外部パートナーまで広げていることです。今日の製造業では、自社ですべてを完結させるのではなく、外部の専門企業と連携する水平分業モデルが一般的です。しかし、企業間でシステムが異なるため、情報連携はメールや電話、FAXといった手作業に頼らざるを得ない場面も依然として多く残っています。

MOSは、こうした企業間の壁を越えたデータ連携とコラボレーションを促進することを意図しています。これにより、発注元は委託先の生産進捗や品質データをリアルタイムに近い形で把握でき、委託先は仕様変更や納期調整といった情報を迅速に受け取ることが可能になります。サプライチェーン全体での透明性を高め、変化への対応力を強化する狙いがあると考えられます。

従来のシステムとの関係性

MOSは、既存のERPやMESをすべて置き換えるものではなく、むしろそれらのシステムを連携させ、補完する役割を担うものと捉えるのが実態に近いでしょう。ERPが経営資源の全体最適を担い、MESが製造現場の実行管理を担うのに対し、MOSはそれらのシステム間の情報連携を円滑にし、さらに外部パートナーとの情報共有基盤を提供するレイヤーとして機能します。

特に「コラボレーション」という機能は重要です。単にデータを共有するだけでなく、仕様変更の承認プロセス、品質問題に関するやり取り、納期に関する協議などをシステム上で行えるようになれば、サプライチェーン全体の意思決定のスピードと精度を大きく向上させる可能性があります。

日本の製造業への示唆

今回のNulogy社の発表は、北米の一企業の動きではありますが、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。以下に要点を整理します。

1. システムのサイロ化からの脱却
改めて自社の情報システムが部門や工程ごとに分断されていないか、見直す良い機会となります。特に、設計、生産技術、製造、品質保証といった各部門間の情報連携が円滑に行われているかは、競争力を左右する重要なポイントです。

2. サプライチェーン全体の最適化視点
改善活動の対象を自社工場内に限定するだけでなく、材料サプライヤーや外注先、物流パートナーといった協力会社を含めたサプライチェーン全体で捉える視点が不可欠です。協力会社との情報連携にどのような課題(リードタイム、コスト、品質)があるかを洗い出し、デジタル技術を活用した解決策を検討することが求められます。

3. DXの目指す方向性
「製造OS」というコンセプトは、単に紙の情報をデジタル化する「デジタイゼーション」に留まらず、業務プロセスや組織間の関係性そのものを変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の一つのアプローチと言えます。自社のDX推進において、部分最適に陥っていないか、全体最適の視点で構想を描けているかを確認することが重要です。

直ちにこの種のシステムを導入するということではなくとも、自社のオペレーションを「OS」という包括的な視点で見直し、どこに情報の分断や連携のボトルネックが存在するのかを把握しておくことは、将来の競争力強化に向けた重要な第一歩となるでしょう。

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