英国発、量子コンピューター部品の国産化に向けた動き ―大学発ベンチャーが製造拠点構築へ―

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英国グラスゴー大学発のスタートアップQuantcore社が、量子コンピュータ向け核心部品の国内生産能力を増強するため、250万ポンドの資金調達を実施しました。この動きは、先端技術分野におけるサプライチェーン構築の重要性を示唆する事例として注目されます。

大学発ベンチャーが主導する量子部品の国内生産

英国グラスゴー大学からスピンアウトしたQuantcore社が、250万ポンド(約4.7億円)の資金調達に成功したことが報じられました。調達した資金は、ニオブをベースとした超伝導量子部品の英国内での生産規模を拡大するために投じられるとのことです。量子コンピュータという次世代の国家戦略技術において、その心臓部となるハードウェアのサプライチェーンを国内に確保しようという明確な意図がうかがえます。

先端技術におけるサプライチェーンの重要性

今回のQuantcore社の動きは、単なる一企業の資金調達という枠を超え、経済安全保障の観点からも重要な意味を持ちます。近年、半導体をはじめとする先端技術分野では、地政学的なリスクを背景に、サプライチェーンを特定の国や地域に依存することの脆弱性が世界的に認識されるようになりました。各国が自国内での生産能力の確保に動く中、量子技術という黎明期の分野においても、同様の動きが始まったと捉えることができます。特に、研究開発段階から「製造(Manufacturing)」に焦点を当て、国内での量産化を見据えている点は、日本の製造業にとっても大いに参考になる点です。

ニオブベース超伝導部品と日本の製造技術

記事で触れられている「ニオブベースの超伝導量子部品」は、量子コンピュータを構成する「量子ビット」を実現するための主要な方式の一つです。超伝導状態を維持するために極低温環境が必要となりますが、その製造には、半導体産業で培われてきた薄膜形成や微細加工(リソグラフィ、エッチング等)といった、極めて高度な生産技術が求められます。これは、日本の製造業が長年にわたり強みとしてきた領域と深く関連します。材料技術、精密加工技術、そしてそれらを支える品質管理ノウハウは、このような新しい産業分野においても競争力の源泉となり得るでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の英国の事例から、日本の製造業が読み取るべき要点は以下の通りです。

1. 先端技術分野における国内生産基盤の再評価:
量子技術や次世代半導体など、将来の産業の根幹をなす分野において、国内に生産拠点を持つことの戦略的価値はますます高まっています。研究開発だけでなく、量産化を見据えた製造技術の開発とサプライチェーンの構築が、国家レベルでも企業レベルでも急務と言えるでしょう。

2. 産学連携による「製造」への展開:
大学の基礎研究の成果(シーズ)を、いかにして実際の「ものづくり」に繋げるかが重要です。Quantcore社のように、大学発のベンチャーが研究開発だけでなく、自ら製造能力の構築に乗り出す事例は、日本の産学連携のあり方を考える上で一つのモデルケースとなり得ます。

3. 既存技術の応用と新分野への挑戦:
量子部品の製造には、前述の通り、半導体製造などで培われた既存の生産技術が応用可能です。自社が持つコア技術が、一見関連の薄いように思える最先端分野でどのように活かせるか、常にアンテナを張り、新分野への挑戦を模索する姿勢が求められます。特に、素材、加工装置、計測機器などを手掛ける企業にとっては、大きな事業機会が眠っている可能性があります。

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