金属AMの革新へ、米Freeformが約100億円を調達。「ソフトウェア定義製造」が拓く未来とは

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米国の金属3Dプリンティング企業Freeform社が、大規模な資金調達に成功しました。同社が目指すのは、センサーとソフトウェアで製造プロセスを自律制御する「ソフトウェア定義製造」の実現であり、従来の金属AMが抱える品質やコストの課題を根本から解決する可能性を秘めています。

大規模な資金調達の背景にある高い期待

米国の金属アディティブマニュファクチャリング(AM、いわゆる3Dプリンティング)技術を開発するスタートアップ、Freeform社は、シリーズBラウンドで6,700万ドル(日本円で約100億円に相当)の資金調達を実施したことを発表しました。この資金は、主に同社の製造能力を拡大し、航空宇宙や防衛分野からの高まる需要に応えるために活用されるとのことです。既存の投資家に加え、新たな投資家も参画しており、同社の技術に対する市場の高い期待がうかがえます。

「ソフトウェア定義製造」プラットフォーム “Skyfall”

Freeform社の中核となるのが、現在開発中の「Skyfall」と呼ばれる製造プラットフォームです。同社は、このプラットフォームを2026年前半に本格稼働させることを目指しています。Skyfallは、単なる金属3Dプリンタの集合体ではなく、高度なセンサー技術、リアルタイムのプロセス制御、そして膨大なデータ解析を組み合わせた、統合的な製造システムです。同社はこれを「ソフトウェア定義製造(Software-defined Manufacturing)」と呼んでいます。これは、ハードウェアの物理的な制約をソフトウェアの力で乗り越え、製造プロセスそのものを自律的かつインテリジェントに制御しようという考え方です。日本の製造現場で進められているスマートファクトリー化の動きを、個々の部品製造プロセスレベルで、より高度に実現しようとする試みと捉えることができるでしょう。

従来の金属AMが抱える課題への挑戦

レーザー光で金属粉末を溶融・積層する現在の主流な金属AM技術は、複雑形状の部品を一体で造形できる利点がある一方、実用化にはいくつかの大きな課題がありました。特に、造形条件のわずかな変化で内部欠陥が発生するなど品質がばらつきやすいこと、最適なパラメータ設定に熟練技術者の経験と勘を要すること、そして依然としてコストが高いことなどが挙げられます。Freeform社の「ソフトウェア定義製造」は、これらの課題に正面から取り組むものです。多数のセンサーで溶融プロセスをミリ秒単位で監視し、得られたデータを基にAIがレーザー出力や速度をリアルタイムで最適に調整します。これにより、技術者のスキルへの依存を大幅に低減し、誰が操作しても安定した高品質な部品を、オンデマンドで生産することを目指しています。

品質保証のあり方を変える可能性

このアプローチは、品質管理の観点からも非常に興味深いものです。従来の製造業では、完成した製品に対して非破壊検査などを行い、品質を「事後的に確認」するのが一般的でした。しかしFreeform社の技術は、製造プロセス中に品質をリアルタイムで監視・制御することで、いわば「プロセス内での全数検査とフィードバック制御」を自動で行うことに他なりません。これは、造形プロセスそのものに品質保証を組み込むという、品質保証の考え方を根底から変える可能性を秘めています。特に、航空宇宙や防衛、エネルギー分野など、部品一つ一つの信頼性とトレーサビリティが極めて重要になる領域において、この技術は大きな競争優位性をもたらすと考えられます。

日本の製造業への示唆

今回のFreeform社の動向は、日本の製造業にとっても多くの示唆を含んでいます。

技術的な示唆

金属AMは、もはや単なる試作品製作用のツールではなく、信頼性が求められる最終製品の量産技術へと進化しつつあります。その進化の鍵は、プリンタ本体のハードウェア性能だけでなく、センサー、データ、ソフトウェアを統合したプロセス制御技術が握っています。「ソフトウェア定義製造」という概念は、AMに限らず、切削やプレス、成形といった既存の製造プロセスにも応用できる考え方です。自社のコアとなる製造プロセスをいかにデータ化し、自律的に制御・最適化していくかが、今後の競争力を左右する重要な要素となるでしょう。

事業戦略・サプライチェーンへの示唆

高品質な金属部品を、金型不要で迅速かつオンデマンドに供給できる技術が確立されれば、製品開発のリードタイムは劇的に短縮されます。また、遠隔地の倉庫に補修部品の在庫を持つ代わりに、必要な時に必要な場所で部品を「印刷」するといった、より強靭で効率的なサプライチェーンの構築も可能になります。こうした新しい製造技術がもたらす事業機会を的確に捉え、自社のビジネスモデルを変革していく視点が求められます。

人材育成への示唆

今後の製造業では、従来の機械工学や材料工学といった知見に加え、センサー技術、データサイエンス、ソフトウェア工学といったデジタル領域の知識を併せ持つ人材の重要性がますます高まります。現場においても、単に機械を操作するだけでなく、収集されたデータを読み解き、プロセスの改善につなげる能力が不可欠となるでしょう。分野を横断した知識を持つ技術者の育成が、急務と言えます。

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