ブラジル農牧研究公社(Embrapa)が、同国南部の気候に適した新しい種なしブドウ品種「BRS Pérola」を発表しました。この事例は農業分野のものですが、その開発思想や特徴は、日本の製造業における製品開発や生産プロセス改善を考える上で、多くの示唆に富んでいます。
ブラジル南部の気候に適応した新品種の開発
ブラジル農牧研究公社(Embrapa)は、近年の気候変動の影響を受けやすい同国南部の栽培環境に特化して開発された、種なしブドウの新品種「BRS Pérola」を市場に投入しました。この品種は、穏やかな冬と多雨という特有の気候条件下でも安定した栽培が可能であり、主要な病害への耐性も備えていると報告されています。これは、特定の環境下で最高のパフォーマンスを発揮するよう、使用環境を明確に定義して開発された好例と言えるでしょう。
「作りやすさ」を追求した生産管理上の利点
「BRS Pérola」の特筆すべき点は、その優れた食味や市場性だけでなく、生産管理のしやすさにもあります。開発担当者によれば、この品種は中程度の長さの枝でも着果性が高く、安定した収量を見込めるとのことです。これは、製造業における「プロセスの安定性」や「作業性の良さ」に相当します。いかに優れた機能を持つ製品であっても、製造現場で品質を安定させることが難しかったり、特殊な管理を要したりするようでは、全体としての生産性は向上しません。開発段階から、生産現場での扱いやすさを考慮することの重要性を示唆しています。
研究開発と現場課題の直結
今回の新品種開発は、気候変動というマクロな環境変化と、病害対策や収量安定化といった生産現場の具体的な課題解決を、研究開発によって両立させた事例です。Embrapaのような公的研究機関が、長期的な視点で基礎研究を重ね、それを現場で活用できる具体的な「製品(品種)」として結実させている点は注目に値します。我が国の製造業においても、目先の市場ニーズに応える製品開発だけでなく、将来の環境変化を見据えた材料開発や、生産現場の根本的な課題を解決するプロセス技術の開発に、産学官が連携して取り組むことの価値を再認識させられます。
日本の製造業への示唆
このブラジルのブドウ新品種のニュースから、日本の製造業が学ぶべき点は多岐にわたります。以下に要点を整理します。
1. 環境変化への適応設計: 市場環境、規制、気候変動など、自社の製品が使用され、生産される環境の変化を的確に捉え、それに適応した製品・材料を開発することが、持続的な競争力の源泉となります。特定の条件下で最高の性能を発揮する「特化型」の開発アプローチも有効な戦略の一つです。
2. 生産性を考慮した開発: 製品の機能やスペックだけでなく、生産現場での「作りやすさ」「管理のしやすさ」を開発・設計の初期段階から重要な要件として組み込むべきです。これにより、品質の安定、歩留まりの向上、ひいてはコスト競争力強化に直結します。
3. 長期的視点での研究開発と現場連携: 短期的な成果だけでなく、将来を見据えた研究開発への投資は不可欠です。そして、その研究成果を、生産現場が直面する具体的な課題の解決に繋げるための仕組み作りが重要となります。公設試験場や大学との連携を、より実務的な課題解決の場として活用していく視点が求められます。


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