海外企業の業績報告に学ぶ、製造現場の「モノサシ」の重要性

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海外企業の業績報告からは、自社の経営や現場運営を見直すヒントが得られます。今回は、ある企業の決算報告の断片から、製造現場のパフォーマンスをいかに測定し、企業価値向上に繋げるかという普遍的な課題について考察します。

業績報告の裏にある「経営のモノサシ」

先日報じられた海外鉱業会社の2025年通期業績報告の中で、注目すべき一文がありました。それは、経営陣が「株主に帰属する事業資産のパフォーマンスを監視・評価するために、特定の指標を使用している」という趣旨の記述です。これは、単に生産量や売上高といった数字を追うだけでなく、自社の工場や設備といった「事業資産」が、株主価値の向上にどれだけ貢献しているかを測る、明確な「モノサシ」を持っていることを示唆しています。

我々日本の製造業に置き換えてみれば、これは工場や生産ラインといった「現場の資産」が、どれだけの付加価値を生み出しているかを常に問う姿勢と言えるでしょう。日々の生産活動が、最終的に企業全体の財務状況や企業価値にどう結びついているのか。その因果関係を明確にするための指標管理は、経営層から現場リーダーまでが共有すべき重要な視点です。

製造現場のKPIは経営に繋がっているか

多くの製造現場では、生産性、品質、コスト、納期(PQCD)といった指標が日々の管理に用いられています。これらは現場のオペレーションを改善する上で不可欠なものですが、時としてそれらの指標を追い求めること自体が目的化してしまうことがあります。

例えば、現場が「稼働率の向上」のみを追求した結果、市場の需要を上回る製品を生産してしまい、過剰な在庫を抱えてしまうケースは珍しくありません。この場合、現場のKPIである稼働率は達成されても、会社全体のキャッシュフローは悪化し、保管コストも増大します。元記事にある「パフォーマンスを監視・評価する」という行為は、こうした部分的な最適化の罠を避け、現場の活動が全社の利益に確実に貢献しているかを確認するために他なりません。

経営と現場をつなぐ指標の設計

経営層が見る財務諸表の数字と、現場が日々追いかけている生産指標との間には、しばしば大きな隔たりが存在します。このギャップを埋めることが、強い工場運営の鍵となります。例えば、以下のような指標は、経営と現場をつなぐ役割を果たします。

  • 設備総合効率(OEE): 稼働率だけでなく、性能や品質も加味した指標。設備の真の生産能力を示し、投資対効果の評価に繋がります。
  • 在庫回転日数: 部品や仕掛品、製品がどれくらいの期間で現金化されているかを示す指標。キャッシュフローの健全性を現場レベルで意識させます。
  • 製品別・ライン別採算: 個別の製品や生産ラインがどれだけの利益を生んでいるかを可視化することで、現場の改善努力が直接的に収益向上に貢献している実感を持たせます。

こうした指標を導入し、現場の改善活動が企業全体の業績にどう反映されるかを「見える化」することで、従業員一人ひとりが経営的な視点を持ち、より本質的な改善に取り組む動機付けとなります。

日本の製造業への示唆

今回の記事から、我々日本の製造業が改めて認識すべき点を以下に整理します。

1. 経営視点でのKPI設定と共有:
現場で管理しているPQCDが、最終的に投下資本利益率(ROIC)やキャッシュフローといった企業価値にどう貢献するのか、その繋がりを意識した指標体系を構築し、経営層から現場までが共有することが重要です。自社の工場や設備という「事業資産」の価値を最大化する視点が求められます。

2. 全体最適を促す仕組み:
部門ごとの部分最適に陥らないよう、生産、品質、保全、そして営業や経理といった部門間の壁を越えて、連動したKPIを持つことが望まれます。例えば、生産部門の在庫削減努力が、経理部門が管理するキャッシュフロー指標の改善に繋がる、といった連動性を明確にすることが有効です。

3. 定期的な監視と対話の徹底:
指標は設定して終わりではなく、定期的にその達成度をレビューし、なぜ目標を達成できたのか(あるいはできなかったのか)を深く掘り下げる対話の場が不可欠です。そのプロセスを通じて、指標そのものの妥当性を見直したり、新たな課題を発見したりすることができます。経営と現場が一体となってPDCAサイクルを回していく文化の醸成が、持続的な競争力の源泉となります。

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