パーフェクトオーダーの追求:モノの流れと情報の流れを一致させる重要性

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顧客満足度を測る指標として「パーフェクトオーダー(Perfect Order)」が注目されています。これは単に製品を納期通りに届けるだけでなく、それに付随する情報の正確性までを問う包括的な考え方であり、実現のためには部門を越えたデータ連携が不可欠です。

パーフェクトオーダーとは何か?

製造業における顧客満足度やサプライチェーンのパフォーマンスを測る指標は数多く存在しますが、近年その重要性が再認識されているのが「パーフェクトオーダー」です。これは、顧客からの注文が、何一つ問題なく完璧に遂行された割合を示すKPI(重要業績評価指標)を指します。具体的には、以下の要素がすべて満たされている状態を「完璧な一回の注文」と定義します。

  • 正しい製品(On-Time):注文通りの品目・仕様であること
  • 正しい数量(In-Full):注文通りの数量であること
  • 正しい場所へ:指定された納品先に届けられること
  • 正しい時間(On-Time):指定された納期に間に合うこと
  • 正しい状態:輸送中の破損や汚損がないこと
  • 正しい書類:納品書や請求書に誤りがないこと

日本の製造現場では、個々の要素、例えば「納期遵守率」や「良品率」は高い水準で管理されていることが多いでしょう。しかし、これらすべてを掛け合わせたパーフェクトオーダー率を算出すると、思いのほか低い数値になることがあります。特に見過ごされがちなのが、製品そのものではない「書類」や、それに付随する「データ」の不整合です。

モノの流れと情報の流れの乖離

元記事が指摘するように、パーフェクトオーダー達成の鍵は「正しいデータ」をサプライチェーン全体で共有することにあります。現場では、モノは正しく生産され、出荷されているかもしれません。しかし、その動きを記録する情報の流れが滞っていたり、不正確であったりするケースは少なくありません。

例えば、生産実績のシステムへの入力が翌日になっていたり、出荷指示が手作業の伝票でやり取りされていたりすると、モノの動きと情報の動きにタイムラグや齟齬が生じます。営業部門が参照する在庫データと、倉庫が把握している実在庫が一致しないといった問題は、こうした情報の流れの分断が原因であることが多いのです。この乖離が、結果として誤った納期回答や請求ミスにつながり、パーフェ-クトオーダーの達成を妨げる要因となります。

ERPと生産管理システムの連携が鍵

こうした情報の分断を解消し、モノと情報の流れを一致させるためには、基幹システムであるERP(Enterprise Resource Planning)と、製造現場を管理する生産管理システム(MES: Manufacturing Execution Systemなど)とのデータ連携が極めて重要になります。

顧客からの受注情報がERPに入力された際、その情報がシームレスに生産管理システムに連携され、生産指示として現場に伝わる。そして、現場での生産実績や品質検査の結果がリアルタイムでシステムにフィードバックされ、ERP上の在庫情報や原価情報が更新される。この一連の流れが自動化・統合されることで、手作業による入力ミスや確認作業が大幅に削減され、データの正確性と即時性が飛躍的に向上します。

正確なデータが全部門で共有されることで、営業は正確な在庫引当と納期回答が可能になり、生産計画担当は需要変動に迅速に対応でき、経理部門は出荷実績に基づいた正確な請求書を遅滞なく発行できるようになります。まさに、これが「正しいデータ」がもたらす価値であり、パーフェクトオーダーの土台となるのです。

日本の製造業への示唆

今回のテーマは、日本の製造業が持つ強みをさらに高めるための重要な視点を提供しています。以下に、実務への示唆として要点を整理します。

要点

  • 顧客満足の再定義:顧客満足を「モノの品質・納期」だけでなく、「取引プロセス全体の正確性」という広い視野で捉え、パーフェクトオーダーという指標に関心を向けることが重要です。
  • 情報の流れの可視化:自社の受注から納品・請求までのプロセスにおいて、どこで情報が手作業で転記され、どこで流れが滞留しているのかを可視化することが、改善の第一歩となります。
  • システム連携の重要性:部門最適で導入されたシステムのサイロ化が、情報の分断を生む大きな原因です。特にERPと生産管理システムの連携は、サプライチェーン全体の効率と正確性を向上させるための投資対効果が高い領域と考えられます。

実務へのヒント

まずは、自社の「パーフェクトオーダー率」を試験的にでも算出してみることをお勧めします。出荷ミス、数量間違い、納期遅延だけでなく、納品書や請求書の再発行といった事象もカウントに含めることで、これまで見えていなかったプロセスの課題が明らかになるかもしれません。

大規模なシステム刷新が困難な場合でも、例えば受注情報と生産指示の連携、あるいは生産実績と出荷情報の連携など、最もボトルネックとなっている箇所から部分的にデータ連携を試みることも有効なアプローチです。モノづくりにおける高い品質管理能力を、それを支える情報の流れにも適用していくという発想が、これからの競争力を左右する重要な鍵となるでしょう。

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