インテル、タワーセミコンダクターとのファウンドリ契約を解消 – 半導体事業戦略の再編か

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米インテルが、イスラエルの半導体ファウンドリであるタワーセミコンダクターとの製造受託契約を解消したことが明らかになりました。これは昨年の買収計画断念に続く動きであり、インテルのファウンドリ事業における戦略の大きな転換点を示唆するものとして注目されます。

買収断念後の代替策からの撤退

インテルは2023年8月、中国の規制当局の承認が得られなかったことを理由に、タワーセミコンダクターの買収を断念しました。その直後、両社は協力関係を維持するため、インテルが自社の工場でタワー向けの半導体を製造するという新たなファウンドリ契約を締結していました。

この契約では、インテルがニューメキシコ州の工場(Fab 11X)の生産能力を活用し、タワーが得意とする65nmプロセスのBCD(Bipolar-CMOS-DMOS)技術を用いたパワーマネジメントICなどを製造する計画でした。しかし、今回この契約からも手を引くという判断が下されたことになります。これは、単なる個別契約の見直しというよりも、インテル全体の事業ポートフォリオと投資の優先順位が変化していることの表れと見てよいでしょう。

背景にあるインテルの戦略転換と経営資源の集中

今回の契約解消の背景には、インテルが進める「IDM 2.0」戦略における、より一層の経営資源の集中があると考えられます。インテルは自社のファウンドリサービス(IFS)を事業の大きな柱と位置付けていますが、その中核は最先端の微細化プロセスにあります。

現在、インテルはÅ(オングストローム)時代を見据えた最先端プロセス技術の開発と量産化に巨額の投資を行っています。こうした状況下で、比較的成熟した技術である65nmといったレガシープロセスの受託製造にリソースを割くことについて、社内で優先順位が見直された可能性があります。タワーとの契約解消と同時に、イスラエルで計画していた新工場の建設中止も報じられており、全社的に投資の選択と集中を加速させている様子がうかがえます。

サプライチェーンにおける不確実性の増大

タワーセミコンダクターにとっては、インテルという巨大なパートナーとの生産計画が白紙に戻ったことになり、代替の生産委託先を探す必要に迫られます。同社が手掛けるアナログ半導体やパワー半導体は、自動車や産業機器、民生機器など幅広い分野で不可欠な部品であり、その供給能力は顧客の生産計画にも直結します。

今回の件は、半導体業界において、大手企業同士の提携であっても、経営戦略の変更によって突然計画が覆るリスクがあることを改めて示しました。特に、地政学的な要因や急激な市場環境の変化が複雑に絡み合う昨今、特定のサプライヤーや生産拠点に依存することの危うさが浮き彫りになった事例と言えるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回のインテルの決定は、遠い海外の半導体業界の話として片付けることはできません。日本の製造業にとっても、サプライチェーン戦略や事業継続計画(BCP)を考える上で、いくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. 大手サプライヤーの戦略変更リスクの再認識
巨大企業との取引は安定しているように見えますが、その経営判断はグローバルな市場環境や株主の意向に大きく左右されます。自社のキーデバイスを供給する企業の投資動向や事業戦略を継続的に注視し、その変化が自社のサプライチェーンに与える影響を常に評価しておく必要があります。

2. レガシー半導体の安定調達の重要性
世間の注目は最先端の半導体に集まりがちですが、自動車、産業機械、白物家電といった製品の根幹を支えているのは、むしろ成熟したプロセスで製造されるパワー半導体やアナログ半導体です。これらの半導体は、需給が逼迫しやすい傾向にあります。今回の件のように、大手ファウンドリがレガシープロセスの生産から手を引く動きは、将来的な供給不安につながる可能性があります。調達部門は、単一の供給元に依存せず、複数のソースを確保しておくことの重要性を再確認すべきでしょう。

3. サプライチェーンの多角的なリスク評価
半導体の調達においては、価格や納期だけでなく、サプライヤーの経営戦略、工場の立地(地政学リスク)、技術ロードマップといった多角的な視点での評価が不可欠です。設計開発の早い段階から、複数の製造委託先に対応できる「セカンドソース」を確保する思想を取り入れるなど、サプライチェーンの強靭化に向けた取り組みが、これまで以上に企業の競争力を左右する時代になっていると言えるでしょう。

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