ダッソー・システムズ社、Googleを商標権侵害で提訴 – AIツールの名称が生産管理ツールと酷似

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PLM(製品ライフサイクル管理)ソフトウェア大手の仏ダッソー・システムズ社が、GoogleのAIツールの名称が自社製品と酷似しているとして、商標権侵害を理由に提訴しました。この一件は、急速に発展するAI技術と既存の産業用ソフトウェアのブランド管理が交差する、新たな課題を浮き彫りにしています。

PLM大手がGoogleを提訴した背景

3D-CAD「CATIA」やPLMプラットフォーム「ENOVIA」で世界的に知られるダッソー・システムズ社が、米Google社を相手取り、商標権侵害を訴えました。問題となったのは、Googleが2023年5月に発表したAI搭載のノートアプリで、当初「Project Tailwind」という名称で公開されました。

ダッソー・システムズ社は、自社のPLMプラットフォーム「ENOVIA」の主要なアプリケーションの一つとして、以前から「Tailwind」という名称の生産管理・サプライチェーン管理ツールを提供しています。このツールは、特に航空宇宙産業や防衛産業をはじめとする多くの製造業で、部品構成表(BOM)の管理や生産計画の最適化などに利用されてきました。

主張の核心は「消費者の混乱」

ダッソー社の訴えの核心は、Googleが同じ「Tailwind」という名称を使用したことにより、顧客や市場に混乱が生じ、自社のブランド価値が回復不能な損害を被るというものです。製造業の現場で使われる専門的なBtoBツールと、一般消費者向けのAIアプリでは領域が異なります。しかし、昨今では製造業のDX推進においてAI活用が急速に進んでおり、両者の境界は曖昧になりつつあります。Googleのような巨大IT企業が同じ名称を使用することで、既存の専門ツールのブランド認知が薄まったり、情報検索時に誤解を招いたりする可能性は十分に考えられます。

日本の製造業においても、ENOVIAをはじめとするダッソー社の製品は、自動車、航空機、産業機械などの設計・生産現場で広く導入されています。そのため、今回の件は決して遠い国の話ではありません。現場の技術者や管理者が情報を探す際、意図せずGoogleの一般向けAIツールの情報に突き当たり、業務上の混乱を招くリスクがあったとも言えるでしょう。

AI時代のブランド管理と知財戦略

注目すべきは、Googleがこの訴訟を受けてか、後に「Project Tailwind」の名称を「NotebookLM」へと変更した点です。これは、商標権侵害のリスクを認識し、紛争の拡大を避けるための対応とみられます。この動きは、新しいAIサービスを次々と市場に投入する大手IT企業にとっても、既存の産業分野、特に専門性の高いBtoBソフトウェアの商標調査が不可欠であることを示唆しています。

AIという新しい技術領域が急速に拡大する中で、サービスやツールのネーミングが、意図せずして既存の製品や技術の権利を侵害してしまうケースは今後も増加する可能性があります。自社の技術や製品ブランドを守るための知的財産戦略の重要性が、改めて問われています。

日本の製造業への示唆

今回の事例は、日本の製造業に携わる我々にとっても、いくつかの重要な示唆を与えてくれます。

1. 自社製品・技術の名称管理の再確認
自社が開発・提供している製品、ソフトウェア、あるいは社内システムの名称が、他社の商標権を侵害していないか、また自社の商標が適切に保護されているかを再評価する良い機会です。特にグローバルに事業を展開する場合、各国の商標登録状況を把握しておくことが、将来的なリスク回避につながります。

2. 新技術導入時の多角的な視点
AIをはじめとする新しいツールやサービスを導入検討する際、その機能やコストだけでなく、名称の由来や提供元の背景にも注意を払う必要があります。特に、既存の基幹システムや生産管理ツールと類似した名称のサービスを導入する際は、社内での混乱を避けるための丁寧な説明と周知が求められます。

3. 知的財産戦略の重要性の再認識
AI技術の活用が本格化する中で、自社のブランド価値や技術的優位性をいかに守るかという観点から、知的財産戦略全体を見直すことが重要です。製品名などの商標だけでなく、AIによって生成された設計データやプログラムコードの著作権・所有権の扱いなど、新たな論点についても社内でのルール作りを進めていくべきでしょう。

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