太陽光発電はクリーンエネルギーの代表格ですが、その製造過程における環境負荷は長年の課題でした。新たな国際研究により、次世代太陽光パネルの製造プロセスを再生可能エネルギーへ転換することで、膨大な量のCO2排出を削減できる可能性が示され、製造業全体のカーボンニュートラルへの取り組みの重要性を改めて浮き彫りにしています。
研究の概要:製造過程のクリーン化が鍵に
最近発表された国際的な共同研究によると、次世代太陽光パネルの製造に使用するエネルギーを、現在の化石燃料中心のものから再生可能エネルギーに切り替えることで、2035年までに世界で最大8.2ギガトン(82億トン)ものCO2排出量を削減できる可能性があると試算されています。これは、太陽光発電という製品そのものの環境性能だけでなく、その製品がいかにして作られるか、つまり「製造プロセス」の環境負荷を低減することの重要性を示唆するものです。
製造エネルギーの「脱炭素化」がもたらすインパクト
82億トンという数字は非常に大きなものです。参考までに、日本の2022年度の温室効果ガス総排出量は約10.8億トン(CO2換算)でしたから、その7倍以上にあたる規模の削減ポテンシャルが、太陽光パネルという一つの製品の製造プロセス改善に秘められていることになります。これは、エネルギーを大量に消費する産業、例えば半導体や化学、鉄鋼といった分野においても、製造過程で使用する電力の脱炭素化がいかに大きなインパクトを持つかを示しています。自社工場の屋根に太陽光パネルを設置したり、再生可能エネルギー由来の電力購入契約(PPA)を結んだりすることは、もはやCSR活動の一環ではなく、事業の根幹に関わる環境戦略となりつつあります。
サプライチェーン全体での取り組みの必要性
この研究は、自社工場(Scope1, 2)におけるエネルギー転換の重要性を強調していますが、日本の製造業にとっては、さらにその先のサプライチェーン全体(Scope 3)を見据えた取り組みが不可欠です。最終製品メーカーは、自社の取り組みだけでなく、部品や素材を供給するサプライヤーに対しても、環境負荷低減の協力を求めていく動きが加速しています。これは、欧州のCBAM(炭素国境調整メカニズム)のような国際的な規制強化の流れとも連動しており、サプライチェーン全体でのカーボンフットプリント管理が、今後の国際競争力を左右する重要な要素となることは間違いありません。これまで日本の製造業が培ってきた、サプライヤーとの緊密な連携や「すり合わせ」の文化を、今後は環境対応の領域でも発揮していくことが求められます。
日本の製造業への示唆
今回の研究結果から、日本の製造業が改めて認識すべき点を以下に整理します。
1. プロダクトからプロセスへ:
製品自体の省エネ性能や環境性能を高めるだけでなく、その製品が「どこで」「どのように」作られているかが問われる時代になっています。製造プロセスのクリーン化は、企業の環境姿勢を示す重要な指標となります。
2. エネルギー源の再点検:
工場で使用する電力や熱の源を再点検し、再生可能エネルギーへの転換を具体的に検討することが急務です。これは、CO2排出量の削減に直接的に貢献する最も効果的な手段の一つです。
3. サプライチェーンとの協働:
自社の努力だけでは限界があります。部品や原材料を供給するパートナー企業と連携し、サプライチェーン全体で環境負荷を低減していく視点が不可欠です。これはリスク管理であると同時に、新たな協力関係を築く好機ともなり得ます。


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