海外の製造現場における生産監督者の求人情報には、これからの日本のものづくりを担う人材育成のヒントが隠されています。本稿では、ある求人事例をもとに、グローバルな視点で求められる現場リーダーのスキルセットと役割について考察します。
海外の生産・技術監督者に求められる専門性
先日、カリブ海地域における製造業の求人情報に目を通す機会がありました。募集されていたのは、生産と技術を統括する上級監督者(Production & Technical Senior Supervisor)のポジションです。注目すべきは、応募資格として挙げられていた専門分野です。具体的には、「生産管理(Production Management)」「工学(Engineering)」「食品科学(Food Science)」「インダストリアル・エンジニアリング(Industrial Engineering)」などの学位や専門資格が求められていました。
日本の製造現場では、長年の経験を持つ叩き上げのリーダーが現場を支える文化が根強くあります。もちろん、その経験と勘は我々のものづくりの大きな強みです。しかし、この求人事例は、日々の生産活動を管理する能力に加え、工学的な知見やIEのような科学的管理手法、さらには業界特有の専門知識(この場合は食品科学)といった、体系的な知識の重要性がグローバルではっきりと認識されていることを示唆しています。
「生産」と「技術」を俯瞰する複合的な役割
この職種名が「生産・技術(Production & Technical)」とされている点も興味深いところです。これは、単に生産計画通りに製品を作るだけでなく、工程の改善、設備の保守、品質上の課題解決といった技術的な側面も統括する役割であることを意味します。日本の工場組織で言えば、製造課と生産技術課が担う役割の一部を兼ね備えたようなポジションと捉えることができるでしょう。
組織の効率化や迅速な意思決定が求められる現代において、生産と技術の両面を理解し、現場で即座に判断を下せるリーダーの価値はますます高まっています。日々の生産を管理しながら、同時に中長期的な視点で工程の最適化を考えられる人材は、工場の競争力そのものに直結します。
日本の人材育成への示唆
この海外の事例は、日本の製造業における現場リーダーの育成方法を改めて考える良いきっかけを与えてくれます。我々の強みであるOJT(On-the-Job Training)による実践的な技能継承を大切にしながらも、それだけでは不十分かもしれません。これからの現場リーダーには、自身の経験則を客観的に裏付けるための体系的な知識を学ぶ機会を提供することが不可欠です。
例えば、現場の班長や係長クラスを対象に、生産管理や品質管理(QC七つ道具など)、IEの基礎といったテーマで定期的な研修(Off-the-Job Training)を行うことは、本人たちの視野を広げ、より論理的な問題解決能力を養う上で非常に有効でしょう。経験と理論の両輪が揃ってこそ、変化の激しい時代に対応できる強靭な現場が育まれるのではないでしょうか。
日本の製造業への示唆
今回の考察から、日本の製造業が今後取り組むべき人材育成に関する要点を以下に整理します。
1. 体系的知識の習得支援:
現場での経験はかけがえのない財産ですが、それに加えて生産管理、品質管理、IEといった普遍的・体系的な知識を学ぶ機会を設けることが重要です。これにより、個人の経験が組織の共有知へと昇華されやすくなります。
2. 複合的視点を持つリーダーの育成:
「作る(生産)」ことと「作り方を改善する(技術)」ことを両輪で考えられるリーダーの育成が求められます。部門間の壁を越えたジョブローテーションや、改善プロジェクトへの積極的な参加を促すことも有効な手段です。
3. グローバル基準の意識:
海外の工場や他社の事例に目を向けることで、自社の人材要件や育成プログラムを客観的に見直すことができます。世界で通用する人材を育てるという視点は、国内市場が成熟する中で、企業の持続的な成長に不可欠な要素となるでしょう。


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