中国最大の半導体ファウンドリであるSMIC社は、旺盛な需要に応えるため生産能力の増強を続ける方針を明らかにしました。一方で、先行投資に伴う減価償却費の増大が利益を圧迫しており、製造業における投資と収益性のバランスという普遍的な課題を浮き彫りにしています。
増収も、大幅な減益となった決算内容
中国の半導体受託製造(ファウンドリ)最大手、SMIC(中芯国際集成電路製造)が発表した2023年第4四半期の決算は、売上高が前年同期比3.5%増の16億8000万ドルと市場予想を上回りました。これは、顧客企業の在庫調整が進み、半導体需要が底を打ちつつあることを示唆しています。しかしその一方で、純利益は同54.5%減の1億7400万ドルと大幅に落ち込みました。特に、工場の収益性を示す粗利益率は16.4%と、前年同期の32%からほぼ半減しており、厳しい事業環境がうかがえます。
利益を圧迫する減価償却費の負担
この大幅な利益率低下の主な要因は、過去数年にわたる積極的な設備投資にあります。新しい工場や製造装置への投資は、会計上、減価償却費として数年間にわたって費用計上されます。SMICは2024年も前年並みの高水準の設備投資を継続する計画であり、この減価償却費の負担は今後さらに重くなる見通しです。これは、将来の成長のために現在の利益を犠牲にするという、装置産業特有の経営判断と言えます。日本の製造業においても、大規模な設備更新や工場新設の際には、同様に減価償却が損益に与える影響を慎重に考慮する必要があります。
市場回復を見据えた戦略的な能力増強
SMICは、顧客の在庫水準が正常化し、需要が回復に向かうとの見通しを示しています。短期的な利益率の悪化を許容してでも生産能力を増強するのは、この需要回復の波を確実に捉え、市場シェアを拡大するための戦略的な動きと解釈できます。特に、米国の輸出規制の影響を受けにくい28nm以上の成熟プロセス(レガシー半導体)への投資が中心とみられており、自動車や産業機器、民生機器向け半導体市場での存在感を高めようとする意図がうかがえます。
日本の製造業への示唆
今回のSMICの発表は、日本の製造業関係者にとっていくつかの重要な示唆を含んでいます。
1. 半導体市場の底打ちと回復への期待
世界的な半導体サプライヤーであるSMICの強気な投資計画は、半導体市況が底を打ち、回復フェーズに入りつつあることの証左と捉えられます。半導体を多く使用する電子機器メーカーや自動車関連企業は、今後の部材調達計画を立てる上で参考にすべき動向です。
2. 成熟プロセス半導体における競争激化
SMICが注力する成熟プロセスは、日本の半導体メーカーが得意とする領域と重なります。今後、特にパワー半導体やMCU(マイクロコントローラ)などの分野で、中国勢との価格競争やシェア争いが一層激化する可能性があります。自社製品の技術的な優位性や品質、安定供給体制といった付加価値を改めて問い直す必要があります。
3. 設備投資と収益性のジレンマ
需要を見越した先行投資が、減価償却費として短期的な収益を圧迫する構図は、製造業に共通の経営課題です。市場の将来予測の精度、投資回収期間のシミュレーション、そして財務体力といった要素を総合的に勘案した、慎重な投資判断の重要性を改めて示しています。自社の設備投資計画を策定する上で、他社の事例として大いに参考になるでしょう。


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