医療機器の受託製造(CMO)市場、2030年に1552億ドルへ急成長の見通し

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世界の医療機器受託製造(CMO/CDMO)市場が、2030年までに1552億ドルに達するとの市場予測が発表されました。単なる製造委託に留まらず、OEMの戦略的パートナーとして役割を拡大するCMOの動向は、日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。

世界市場の堅調な成長予測

米国の市場調査会社ResearchAndMarkets.comが発表したレポートによると、世界の医療機器受託製造市場は、2023年の916億ドルから、2030年には1552億ドルに達すると予測されています。これは年平均成長率(CAGR)7.8%に相当し、非常に堅調な成長が見込まれる市場であることが分かります。この成長の背景には、医療機器メーカー(OEM)と受託製造企業(CMO)の関係性の変化があります。

市場成長を牽引する要因

市場拡大の主な要因として、以下の点が挙げられます。

1. OEMの事業戦略の変化
医療機器メーカー(OEM)は、研究開発やマーケティング、販売といった自社のコアコンピタンスに経営資源を集中させる傾向を強めています。製造を専門性の高いCMOへ委託することで、コスト削減や開発・市場投入までの期間短縮を図っており、この流れがCMO市場の拡大を直接的に後押ししています。

2. 医療機器の高度化・複雑化
診断装置や治療機器は、エレクトロニクス、ソフトウェア、精密加工技術などが融合し、年々その構造が複雑化しています。これに伴い、製造には高度な技術力と厳格な品質管理体制が不可欠となります。すべてを自社で賄うのではなく、特定の技術や工程に秀でたCMOを活用する方が合理的であると判断するOEMが増えています。

3. 世界的な高齢化と慢性疾患の増加
世界的な高齢化の進展や生活習慣病などの慢性疾患の増加により、医療機器そのものの需要が継続的に拡大しています。特に、これまで医療インフラの整備が遅れていた新興国において、経済成長と共に需要が急増しており、アジア太平洋地域は最も高い成長率を示すと予測されています。

「製造委託先」から「戦略的パートナー」へ

今回のレポートで特に注目すべきは、CMOの役割の変化です。かつてCMOは、OEMから提供された図面通りに製品を製造する、いわゆる「下請け」の役割が中心でした。しかし今日では、製品のコンセプト設計や開発段階から関与し、量産化設計(DFM)、部材調達、製造、薬事申請のサポート、さらにはサプライチェーン全体の管理までを一貫して請け負う「戦略的パートナー」へと進化しています。

こうしたエンドツーエンドのサービスを提供できるCMOは、OEMにとって単なるコスト削減の手段ではなく、事業成長に不可欠な存在となりつつあります。この関係性の深化が、市場全体の付加価値を高める要因にもなっています。

日本のものづくりの強みが活きる領域

市場をサービス別に見ると、「最終製品組立」や「電子機器製造サービス(EMS)」、「原材料・コンポーネント製造」が主要な分野となっています。また、医療機器のリスク分類では、人工呼吸器や輸液ポンプなどが含まれる「クラスII(中リスク)」が市場の大半を占めていますが、植込み型ペースメーカーなどの「クラスIII(高リスク)」分野も、より高度な技術と品質保証が求められるため、付加価値の高い領域として成長が見込まれます。

これらの分野は、日本の製造業が長年培ってきた精密加工技術、高品質な電子部品、高機能素材といった強みを直接的に活かせる領域です。特に、人命に直結するため極めて高い信頼性が求められるクラスII、クラスIIIの機器においては、日本のものづくりの品質と実直さが大きな競争優位性となり得るでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の市場予測は、日本の製造業にとって重要な機会と課題を示しています。以下に要点を整理します。

1. 成長市場への事業展開
医療機器分野は、景気変動の影響を受けにくく、長期的に安定した成長が見込める魅力的な市場です。自動車や電機といった他分野で培った技術を応用し、この成長市場へ参入・事業拡大を検討する価値は大きいと言えます。

2. 高付加価値化へのシフト
単に指示された部品を製造するだけでなく、設計・開発の初期段階から顧客に提案し、量産化や品質保証、サプライチェーン全体を支援する「ソリューション提供型」の事業モデルへの転換が求められます。これにより、価格競争から脱却し、収益性の高いビジネスを構築することが可能になります。

3. グローバル品質基準への対応
医療機器市場、特に海外市場への展開を目指すのであれば、品質マネジメントシステムの国際規格である「ISO 13485」の認証取得は必須条件となります。これは単なる認証取得に留まらず、設計から製造、出荷、市販後まで、製品のライフサイクル全体にわたる品質保証体制を工場内で確立・維持することを意味します。

4. OEMとの関係深化
既存の取引先であるOEMに対して、より踏み込んだ技術提案や改善提案を積極的に行い、信頼関係を深化させることが重要です。単なるサプライヤーから、事業の成功を共に目指すパートナーとして認識されることが、新たなビジネスチャンスの獲得に繋がります。

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