カナダの学生たちが、マイクロプラスチックという社会課題に対し、高品質なまな板の製造・販売を通じて取り組んでいます。この事例は、単なる社会貢献活動に留まらず、サステナビリティ、製品の付加価値、そして次世代の人材育成という、現代の製造業が直面する重要なテーマについて示唆を与えてくれます。
社会課題を起点とした「ものづくり」の実践
カナダのPembina Valley地域で、現地の高校生たちが Junior Achievement (JA) プログラムの一環として事業を立ち上げ、注目を集めています。彼らが着目したのは、私たちの食生活に忍び寄るマイクロプラスチックの問題です。特に、安価なプラスチック製のまな板は、使用するたびに微細なプラスチック片が削れ、食材に付着するリスクが指摘されています。この課題に対し、彼らは代替となる高品質な木製カッティングボード(まな板)を製造・販売するという、ものづくりを通じた解決策を提示しました。
本格的な工場運営と経営管理
この取り組みが特筆すべきは、単なる製品開発や販売体験に留まっていない点です。元記事によれば、彼らは生産管理、経営管理、安全衛生、事業報告、さらには株主への報告といった、企業活動に不可欠な要素をすべて実践しています。これは、規模こそ小さいものの、まさしく製造業の工場運営そのものです。製品の品質を確保するための生産プロセス、作業者の安全を守るためのルール、そして事業の成果をステークホルダーに説明する責任。こうした基本を学生たちが忠実に実行していることは、私たち実務者にとっても、事業運営の原点を再確認させられるのではないでしょうか。日本の製造現場が長年培ってきた、品質や安全へのこだわりと通じるものがあると言えます。
「高品質」がもたらす環境価値
彼らが提供するのは、単なる「プラスチックではないまな板」ではありません。「高品質」であることにこだわっています。これは、安価な製品を頻繁に買い替える消費スタイルから、良質なものを長く大切に使うスタイルへの転換を促すものです。耐久性の高い製品は、結果として廃棄物を減らし、長期的な環境負荷の低減に繋がります。環境配慮(サステナビリティ)と、高品質・高付加価値化は、決して相反するものではなく、むしろ密接に関連していることを、この事例は示唆しています。これは、過剰なコストダウン競争から脱却し、製品の価値そのもので勝負しようとする多くの日本企業にとって、追い風となる考え方です。
日本の製造業への示唆
この学生たちの取り組みから、私たちはいくつかの重要な視点を得ることができます。
1. 社会課題解決を事業の核に据える:
自社の技術や製品が、環境問題や社会課題の解決にどう貢献できるか。この視点を持つことで、新たな事業機会や製品の付加価値が生まれる可能性があります。パーパス経営(企業の存在意義を重視する経営)が注目される中、事業活動と社会貢献を結びつけることの重要性は増しています。
2. 実践を通じた次世代人材の育成:
企画から生産、販売、報告までの一連の流れを体験することは、座学では得られない貴重な学びとなります。社内の若手技術者や現場リーダーの育成プログラムにおいて、小規模でもプロジェクト全体を任せ、事業運営の全体像を掴ませるような機会を設けることは、非常に有効な手段となり得ます。
3. 「良いものを長く」という価値の再認識:
使い捨て文化へのアンチテーゼとして、耐久性や品質を追求する「ものづくり」の姿勢は、改めて顧客からの共感と信頼を得る源泉となります。これは、日本の製造業が本来持っている強みであり、その価値を自信をもって訴求していくべきでしょう。
学生たちの純粋な問題意識から始まったこの事業は、私たち製造業に携わる者にとって、自社の事業の在り方や、次世代に何を伝えていくべきかを考える上で、多くのヒントを与えてくれる好事例と言えます。


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