太陽光パネル製造の環境負荷、最大の鍵は「電力ミックス」にあり ― Nature誌が示すサプライチェーンの課題

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太陽光パネルはクリーンエネルギーの象徴ですが、その製造過程では相当量のCO2が排出されます。英科学誌Natureに掲載された最新の研究は、製造時のCO2排出量の大部分が工場の使用電力に起因し、どの地域で生産されるかによって環境負荷が大きく異なることを明らかにしました。本稿では、この研究結果が日本の製造業のサプライチェーン管理や脱炭素戦略に与える示唆を解説します。

クリーンな製品と、その製造プロセスにおける環境負荷

近年、多くの製造業において、製品のライフサイクル全体での環境負荷、特にカーボンフットプリントの算定と削減が重要な経営課題となっています。太陽光パネルのように、使用段階ではCO2を排出しないクリーンな製品であっても、その部材調達から製造、輸送、廃棄に至るまでの過程ではエネルギーが消費され、CO2が排出されます。今回のNature誌の研究は、この製造プロセスにおける環境負荷、特に電力消費の重要性を改めて浮き彫りにしました。

製造拠点の「電力ミックス」がカーボンフットプリントを左右する

同研究が指摘する最も重要な点は、製造時のCO2排出量を決定づける最大の要因が、工場で使用される「電力の炭素強度」、すなわち電力ミックスであるということです。電力ミックスとは、発電方法の構成比率(火力、原子力、再生可能エネルギーなど)を指します。例えば、石炭火力発電の比率が高い地域で製造された太陽光パネルは、水力や太陽光など再生可能エネルギーの比率が高い地域で製造されたものに比べて、製造時のCO2排出量が格段に多くなります。これは、太陽光パネルの製造、特に原料となるシリコンインゴットの製造工程が高温処理を必要とし、大量の電力を消費するためです。日本の製造業においても、自社工場の省エネルギー化は当然のことながら、どのような電力源を選択するかが、製品の環境価値を大きく左右する時代になったと言えるでしょう。

グローバルサプライチェーンにおける新たな評価軸

この研究は、グローバルに展開されるサプライチェーンの管理にも新たな視点を提供します。太陽光パネルの生産は、現在、特定の国や地域に集中している傾向があります。もし、その地域の電力ミックスが化石燃料に大きく依存している場合、世界中で利用される太陽光パネルのカーボンフットプリント全体を押し上げる結果につながります。これは、部品や素材を海外から調達する日本の製造業にとっても他人事ではありません。コストや品質、納期といった従来の評価軸に加え、サプライヤーが立地する国や地域の電力事情、すなわち「脱炭素化の進捗度」が、調達先を選定する上での重要な判断材料となりつつあります。サプライチェーン全体でのCO2排出量(Scope3)の把握と削減が求められる中、こうした視点は今後ますます重要性を増していくと考えられます。

日本の製造業への示唆

今回の研究結果から、日本の製造業が実務レベルで考慮すべき点を以下に整理します。

1. 自社工場の使用電力の再評価と脱炭素化:製品のカーボンフットプリントを低減する上で、自社工場の使用電力を再生可能エネルギー由来のものに切り替えることは、極めて効果的かつ直接的な手段です。再生可能エネルギー電力の購入契約(PPAなど)や自家消費型太陽光発電の導入は、もはやCSR活動の一環ではなく、製品競争力を高めるための戦略的投資と捉えるべきです。

2. サプライチェーン全体のCO2排出量管理の深化:主要な部品や素材を供給するサプライヤーに対して、その製造プロセスにおける使用電力の状況やCO2排出量に関するデータ提供を求めることが重要になります。今後は、サプライヤー選定の基準に環境負荷の項目を明確に組み込み、サプライチェーン全体で脱炭素化を推進していく姿勢が求められます。

3. 生産拠点の戦略的見直し:グローバルな生産体制を構築・見直しする際には、人件費や物流コストに加え、各地域の電力コストと電力ミックス(炭素強度)を重要な評価項目として考慮する必要があります。再生可能エネルギーが安価で豊富に利用できる地域は、長期的には競争力のある生産拠点となり得ます。これは、将来の工場立地戦略を考える上で、重要な示唆と言えるでしょう。

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