カナダ政府が韓国との間で、自動車製造分野における協力関係を強化するための覚書(MOU)を締結しました。この動きは、電気自動車(EV)への移行が加速する中、北米におけるバッテリーや重要鉱物のサプライチェーンを再構築しようとする国際的な潮流を反映したものです。
カナダと韓国、自動車・バッテリー分野での協力を正式化
報道によれば、カナダ政府と韓国は、自動車製造、特にEV用バッテリーとそのサプライチェーンに関する協力関係を強化するための覚書(MOU)に署名しました。カナダはニッケルやリチウムといった重要鉱物の豊富な資源国であり、一方の韓国はLGエナジーソリューション、サムスンSDI、SKオンといった世界有数のバッテリーメーカーを擁しています。この両国の連携は、それぞれの強みを活かし、北米市場向けのEVサプライチェーンを強固にすることを目的としています。
背景にあるサプライチェーンの多角化と「脱中国」依存
カナダ・グローバル自動車メーカー協会(GAC)のデイビッド・アダムスCEOが指摘するように、今回の覚書は、カナダ政府が進めるサプライチェーンの多角化戦略の一環とみられます。近年、地政学的なリスクの高まりや特定国への過度な依存が問題視されており、特にEVバッテリーのサプライチェーンにおいては中国が大きなシェアを占めています。アメリカのインフレ抑制法(IRA)なども追い風となり、北米では域内でのバッテリーおよび重要鉱物の調達・生産体制を構築する動きが活発化しています。今回のカナダと韓国の連携は、こうした大きな流れの中で、中国への依存度を低減し、安定的で強靭なサプライチェーンを築こうとする狙いがあると考えられます。
北米市場における競争環境の変化
この連携強化は、北米市場で事業を展開する日本の自動車メーカーや部品メーカーにとっても、無視できない動きです。韓国のバッテリーメーカーはすでに北米の多くの自動車メーカーと提携し、大規模な工場建設計画を進めています。ここにカナダの豊富な資源が結びつくことで、原材料の調達からバッテリー生産、そして車両組立までの一貫したサプライチェーンが北米内でさらに強化される可能性があります。これにより、韓国勢のコスト競争力や供給安定性が向上し、日本企業との競争はより一層激しくなることが予想されます。我々としては、北米における自社のサプライチェーン戦略や、パートナーシップのあり方を再点検する必要があるかもしれません。
日本の製造業への示唆
今回のカナダと韓国の連携強化から、我々日本の製造業が読み取るべき要点と実務的な示唆を以下に整理します。
1. サプライチェーンの地政学リスク評価の常態化:
特定国への依存がもたらすリスクは、もはや一時的な課題ではありません。自社のサプライチェーンを定期的に見直し、地政学的な変動に耐えうる多角化や代替調達先の確保を、経営の重要課題として継続的に取り組む必要があります。
2. 北米EV市場における競争戦略の再構築:
韓国勢とカナダの連携は、北米市場におけるEV・バッテリー分野の競争環境を大きく変える可能性があります。技術的な優位性だけでなく、重要鉱物の安定調達や現地での生産体制を含めた、包括的な競争戦略が求められます。特に、バッテリー材料の安定確保は、今後のEV事業の成否を分ける重要な要素となるでしょう。
3. 資源国との連携強化の重要性:
バッテリーのキーマテリアルとなる重要鉱物の確保は、国レベルだけでなく、企業レベルでも重要な戦略となります。カナダやオーストラリア、南米諸国といった資源国との関係を強化し、長期的な安定調達に向けたパートナーシップを模索することが、今後の事業継続において不可欠です。


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