欧州の再生可能エネルギー戦略に学ぶ、製造とサービスの新たな関係性

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欧州は再生可能エネルギー分野において、単なる製品供給元としてだけでなく、製造とサービスの両面で重要な役割を担っていると指摘されています。この動きは、アジア勢との価格競争とは異なる土俵で価値を創出するモデルであり、日本の製造業にとっても示唆に富むものです。

「製造」と「サービス」の両輪で価値を創出する欧州

再生可能エネルギー分野の専門メディアであるPV Techは、英国の投資開発会社Low Carbon社の発言として「欧州は再生可能エネルギーの供給において、製造とサービスの両面で決定的な役割を果たしている」と報じています。太陽光パネルの生産量ではアジア、特に中国が圧倒的なシェアを占める中で、この発言は欧州独自の強みと戦略を示唆しており、我々日本の製造業関係者も注目すべき点です。

この「製造」とは、単に太陽光パネルや風力タービンといった最終製品の大量生産を指すものではないと考えられます。むしろ、インバーター(パワーコンディショナ)や高性能なバックシート、特殊な封止材といった基幹部品・部材、あるいはそれらを生産するための高度な製造装置といった、技術的優位性を発揮できる高付加価値領域に特化していると捉えるべきでしょう。これは、日本の製造業が長年得意としてきた「すり合わせ技術」や「素材技術」が活かせる領域と重なります。

製品単体ではない、ソリューションとしての価値提供

さらに重要なのが「サービス」との連携です。ここで言うサービスとは、再生可能エネルギー発電所のEPC(設計・調達・建設)、O&M(運用・保守)、プロジェクト開発、さらにはエネルギー取引やファイナンスといった多岐にわたる分野を指します。欧州企業は、優れた製品を供給するだけでなく、それを活用して発電プロジェクト全体を成功に導くためのノウハウやエコシステムを構築しているのです。

これは、単なる「モノ売り」から、顧客の課題解決や事業全体の価値最大化に貢献する「コト売り(ソリューション提供)」への転換を意味します。例えば、発電設備の納入に留まらず、長期的なO&M契約を通じて設備の稼働率を保証したり、発電量予測データと連動したエネルギーマネジメントサービスを提供したりすることで、顧客との継続的な関係を築き、安定した収益源を確保しています。日本の製造業においても、製品のライフサイクル全体を見据えた事業モデルへの変革が求められる中で、大いに参考になるアプローチです。

サプライチェーン再編の中での日本の立ち位置

近年、欧州では経済安全保障の観点から、重要物資の域内生産能力を高める動きが加速しています。再生可能エネルギー関連のサプライチェーンも例外ではなく、アジアへの過度な依存からの脱却が大きな政策課題となっています。このような動きは、サプライチェーンの寸断リスクに備える必要性を浮き彫りにすると同時に、高い技術力を持つ日本企業にとっては新たな事業機会となり得ます。

欧州域内での生産拠点設立を目指す企業にとって、日本の高品質な部材や製造装置は魅力的な選択肢となる可能性があります。現地のニーズを的確に捉え、技術提携や合弁事業なども視野に入れながら、強靭なグローバル・サプライチェーンの一翼を担っていく視点が不可欠となるでしょう。

日本の製造業への示唆

今回の報道から、日本の製造業が今後の事業戦略を考える上で、以下の点を実務的な示唆として捉えることができます。

1. 高付加価値領域への集中:
最終製品における価格競争に固執するのではなく、日本の強みである部材、素材、製造装置、品質管理といった分野で技術的優位性を追求し、グローバル市場での不可欠な存在となることを目指すべきです。品質と信頼性を武器に、欧州市場のニーズに応えていくことが求められます。

2. 「製造×サービス」の事業モデル構築:
自社製品を納入して終わりにするのではなく、導入後の運用・保守、データ解析による最適化提案、コンサルティングなど、製品の価値を最大限に引き出すサービスを組み合わせたソリューションとして提供する視点が重要です。これにより、顧客との長期的な関係構築と収益の安定化が期待できます。

3. グローバルなサプライチェーンの変化への対応:
欧州の域内生産回帰の動きは、日本企業にとってリスクであると同時にチャンスでもあります。地政学的な動向を常に注視し、サプライチェーンの複線化や、海外パートナーとの連携強化を通じて、変化に迅速に対応できる体制を構築しておく必要があります。

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