米国製造業では、深刻化する人材不足への対策として、産学が連携した人材育成プログラム「FAME」が注目を集めています。これは、学生が企業で働きながら専門教育を受ける「稼ぎながら学ぶ」モデルであり、日本の製造業にとっても多くの示唆を含んでいます。
米国で広がる、製造業の人材育成プログラム「FAME」
米国の製造業団体である全米製造業者協会(NAM)の関連組織「The Manufacturing Institute」は、高度製造業教育連合(FAME: Federation for Advanced Manufacturing Education)の新たな支部をアイオワ州に設立したことを発表しました。この動きは、米国製造業が直面する喫緊の課題、すなわち熟練技術者の不足に対する具体的な解決策として注目されています。
FAMEは、いわゆる「稼ぎながら学ぶ(earn-while-you-learn)」を基本コンセプトとする、産学連携の人材育成プログラムです。参加する学生は、地元の製造企業で週3日ほど有給の実務訓練(OJT)を受けながら、提携するコミュニティカレッジ(地域の短期大学)で週2日、専門知識を学びます。この2年間のプログラムを修了すると、準学士号を取得できる仕組みです。
企業と学生、双方にメリットをもたらす仕組み
FAMEプログラムの大きな特徴は、参加企業が学生の教育にも深く関与する点にあります。多くの場合、スポンサーとなる企業が学生の授業料を負担し、給与を支払いながら実践的な指導を行います。これにより、企業は自社のニーズに合致したスキルを持つ、即戦力に近い人材を早期に育成・確保することが可能になります。採用におけるミスマッチを減らし、若手人材の定着率向上にも繋がると期待されています。
一方、学生にとっては、経済的な負担なく高等教育を受けられるだけでなく、卒業後のキャリアパスが明確になるという利点があります。実際に、FAMEプログラムの修了者は非常に高い確率でスポンサー企業に正規雇用され、その初任給は米国の同年代の平均を大幅に上回るというデータも報告されています。専門技術だけでなく、安全意識、プロフェッショナリズム、コミュニケーションといった、現場で求められる総合的な能力が体系的に養われる点も、高く評価されています。
地域ぐるみで産業の未来を支える
今回、アイオワ州で新たに設立された支部は、Vermeer社やPella社といった地元の有力企業が主導し、地域のコミュニティカレッジと連携して運営されます。これは、一企業の取り組みに留まらず、地域社会全体で製造業の未来を担う人材を育てていこうという強い意志の表れと言えるでしょう。FAMEのネットワークは全米に拡大しており、各地域の実情に合わせた形で、製造業の競争力基盤を強化する役割を担っています。
日本の製造業への示唆
この米国のFAMEプログラムは、人材不足や技術伝承に課題を抱える日本の製造業にとっても、重要なヒントを与えてくれます。以下に、実務的な観点からの示唆を整理します。
1. 体系的な産学連携の深化:
個別のインターンシップ受け入れに留まらず、地域の工業高校や高等専門学校、大学と連携し、企業のニーズをカリキュラムにまで反映させるような、より踏み込んだ協力関係を構築することが有効です。現場で本当に必要とされる技術や考え方を、教育段階から体系的に組み込むことで、入社後の育成コストを抑制し、即戦力化を早めることができます。
2. 中長期的な視点での人材投資:
学生への経済的支援は短期的なコスト増に見えますが、これは自社の未来を担う人材への先行投資と捉えるべきです。自社の設備や文化に慣れ親しんだ優秀な人材を卒業と同時に確保できるメリットは、採用コストの削減や早期離職リスクの低減といった形で、長期的には大きなリターンをもたらすと考えられます。
3. 地域連携による人材確保と定着:
特に地方の工場においては、一社単独での人材確保は年々難しくなっています。地域の同業他社や関連企業、そして教育機関が協力し、地域全体で若者を育成し、活躍の場を提供するという共同の取り組みは、人材の地域外への流出を防ぎ、産業基盤を維持・強化する上で極めて重要です。
4. 若年層への新たな魅力発信:
経済的な安定を得ながら専門性を高められるというFAMEの仕組みは、製造業を志す若者にとって大きな魅力です。日本の製造業も、「ものづくりのやりがい」といった情緒的な魅力だけでなく、「明確なキャリアパス」や「学びながら成長できる具体的な制度」を提示することで、次世代の優秀な人材を惹きつけることができるのではないでしょうか。


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