米国オレゴン州議会で、高賃金の製造業雇用を州内に呼び戻すことを目的とした経済開発法案が超党派で提案されました。この動きは、サプライチェーンの再構築が世界的な潮流となる中、工場誘致における工業用地の確保が重要な経営課題であることを示唆しています。
米オレゴン州で製造業支援の新法案が浮上
米オレゴン州の州議会において、超党派の議員グループが「JOBS法案」と呼ばれる経済開発案を提出しました。この法案の主な目的は、高い賃金を支払うことのできる付加価値の高い製造業の雇用を州内に取り戻し、地域経済を活性化させることにあります。近年の世界的なサプライチェーンの混乱や経済安全保障への意識の高まりを受け、米国内では製造業の国内回帰(リショアリング)を後押しする動きが活発化しており、今回の法案もその大きな潮流の一環と捉えることができます。
法案の鍵となる「工業用地の解放」
法案の名称にある「unlock industrial land(工業用地の解放)」という言葉が示すように、今回の提案で特に重視されているのが、工場建設に適した土地の供給です。オレゴン州は「シリコンフォレスト」とも呼ばれ、半導体関連企業の集積地として知られています。米連邦政府のCHIPS法による補助金などを背景に、半導体工場の新設・増設投資が世界的に加速する中、受け皿となる広大な工業用地の不足が深刻なボトルネックとなりつつあります。迅速な工場立ち上げを可能にするためには、許認可プロセスの簡素化やインフラが整備された用地の確保が不可欠であり、州政府が主導してこの課題解決に取り組む姿勢を明確にした形です。これは、工場建設のリードタイムが事業の成否を分ける現代において、極めて実務的な視点と言えるでしょう。
「高賃金雇用」が示す産業政策の方向性
この法案が単なる雇用創出ではなく、「高賃金の」製造業の雇用を目標に掲げている点は注目に値します。これは、安価な労働力に依存した労働集約的な産業ではなく、半導体や先進技術分野のような、高いスキルを持つ人材を必要とする高付加価値産業の誘致を目指していることを意味します。こうした産業は、地域経済への波及効果が大きく、関連産業の集積やサプライヤーの成長にも繋がります。日本の製造業においても、人手不足と賃金上昇圧力が高まる中、生産性向上を通じて高い賃金を実現し、優秀な人材を確保・育成していくという好循環をいかにして作るかが、持続的な成長のための重要な課題となっています。オレゴン州の取り組みは、その一つの方向性を示すものかもしれません。
日本の製造業への示唆
今回のオレゴン州の動きは、日本の製造業関係者にとってもいくつかの重要な示唆を含んでいます。
1. 工場立地における官民連携の重要性
グローバルな工場誘致競争において、用地確保やインフラ整備、規制緩和といった行政の支援は、企業の投資判断を左右する決定的な要因となります。日本国内で生産拠点を新設・増強する際にも、自治体との緊密な連携を通じて、事業スピードを損なわない立地環境を確保することがこれまで以上に重要になるでしょう。
2. サプライチェーン再編と国内生産拠点の価値
経済安全保障の観点から、生産拠点を国内や友好国に見直す動きは今後も続くと考えられます。コスト効率だけでなく、供給の安定性や地政学リスクを織り込んだ上で、国内生産拠点の役割と価値を再評価し、必要な投資を計画的に進めることが求められます。
3. 高付加価値化へのシフトと人材戦略
「高賃金雇用」を目指す政策は、製造業が目指すべき方向が、自動化やデジタル化を前提とした高付加価値なものづくりであることを示しています。単なるコスト削減に留まらず、生産性向上と事業の付加価値創出に注力し、その果実を従業員に還元していくことで、技術力のある人材を惹きつけ、企業の競争力を維持・強化していく視点が不可欠です。


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