海外の医薬品規制の動向として、委託製造の管理強化と製造販売承認取得者(MAH)の責任明確化が進んでいます。この流れは、日本の製造業におけるサプライチェーン全体の品質保証体制のあり方を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。
委託製造における品質保証の新たな潮流
昨今、グローバルなサプライチェーンの複雑化を背景に、製品の品質と安全性を確保するための規制が強化される傾向にあります。特に医薬品業界では、元記事が指摘するように「医薬品の生産管理の強化」が重要なテーマとなっており、その中核にあるのが「委託製造の厳格な規制」と「製造販売承認取得者(MAH)の責任強化」です。
これは、たとえ製造プロセスを外部の専門企業(CMO/CDMO)に委託したとしても、製品の品質に対する最終的な責任は、市場に製品を供給する製造販売業者(MAH: Marketing Authorization Holder)が負うべきである、という考え方を徹底する動きです。この潮流は、医薬品に限らず、多くの日本の製造業にとって他人事ではありません。
委託先の「厳格な規制」が意味するもの
「委託製造の厳格な規制」とは、単に契約書を交わすだけでなく、委託元が委託先の製造管理・品質管理体制を深く理解し、継続的に監督・指導することを求めるものです。日本のGMP(Good Manufacturing Practice)省令においても、委託先の選定評価や定期的な監査、品質に関する取り決めの締結、逸脱・変更管理プロセスの連携などが義務付けられています。
現場の実務として、これは委託先を単なる「外注先」として扱うのではなく、自社の製造部門の延長として捉える必要があることを意味します。品質データの共有、技術者の交流、共同での改善活動などを通じて、委託先と一体となった品質保証体制を構築することが、これまで以上に重要になるでしょう。特に、海外に委託先を持つ場合は、現地の法規制や品質文化の違いも踏まえた、よりきめ細やかな管理体制が求められます。
強まる製造販売業者(MAH)の最終責任
元記事の「マーケティングの責任強化」という表現は、文脈から「製造販売承認取得者(MAH)」の責任強化を指していると考えられます。MAHは、製品の承認を取得し、市場への出荷を決定する主体であり、サプライチェーン全体を通じて製品品質を保証する最終責任を担います。
この責任が強化されるということは、万が一、委託先の製造工程で品質問題が発生した場合でも、その監督責任はMAHにあると見なされることを意味します。したがって、MAHはサプライヤーの選定から原材料の受け入れ、製造工程の管理、最終製品の試験・出荷判定に至るまで、サプライチェーンのあらゆる段階に主体的に関与し、全体を統括管理する能力が不可欠となります。これは、品質保証部門だけでなく、購買、生産管理、技術部門など、組織横断での連携を前提とするものです。
日本の製造業への示唆
今回の医薬品業界の動向は、日本の製造業全体にとって重要な教訓を含んでいます。自社の事業を振り返り、以下の点を再点検することが推奨されます。
1. 委託先管理の再定義
委託先をコストや納期だけで評価するのではなく、品質保証体制や技術力、改善への姿勢などを重視したパートナーとして選定し、継続的な関係を構築することが重要です。品質取り決めや定期監査が形骸化していないか、実効性を検証する必要があります。
2. サプライチェーン全体の可視化と品質保証
自社の直接の委託先(Tier1)だけでなく、その先のサプライヤー(Tier2, Tier3)まで含めたサプライチェーン全体のリスクを把握し、管理する視点が求められます。特に重要部品や原材料については、トレーサビリティの確保が不可欠です。
3. 最終製品責任の再認識
自社ブランドで製品を市場に供給する以上、たとえ製造の大部分を外部に委託していても、品質に関する最終責任は自社にあるという意識を、経営層から現場の担当者まで徹底することが肝要です。問題発生時の迅速な原因究明と対応のためにも、委託先との緊密な情報連携体制は欠かせません。
サプライチェーンのグローバル化と専門分化が進む中で、委託先との連携と管理のあり方は、企業の競争力と信頼性を左右する重要な経営課題であると言えるでしょう。


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