米国のクリーンテック分野において、製造業への投資が減速しているとの報告がありました。特に2023年第4四半期には、計画されていたプロジェクトの中止・延期が過去8年間で最も多い水準に達したとされています。この動きは、脱炭素関連のサプライチェーンにどのような影響を与え、日本の製造業はこれをどう捉えるべきでしょうか。
米国で相次ぐクリーンテック製造拠点の計画見直し
米国の調査によると、2023年第4四半期におけるクリーンテック関連の製造業への投資計画のうち、中止または無期限延期となった件数が、過去8年間の追跡調査で最高水準に達したことが明らかになりました。これは、バイデン政権のインフレ抑制法(IRA)などを背景とした大規模な投資ブームが一巡し、市場が調整局面に入った可能性を示唆しています。特に、電気自動車(EV)用バッテリーや太陽光パネルなどの分野で、鳴り物入りで発表された大規模工場の建設計画が、具体的な実行段階を前に見直されるケースが増えている模様です。
投資減速の背景にあるもの
この投資減速の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っていると考えられます。まず挙げられるのが、世界的な金利の上昇です。資金調達コストが増大したことで、巨額の設備投資を必要とするプロジェクトの採算性が厳しくなっています。加えて、建設資材や人件費の高騰も、当初の事業計画を圧迫する要因となっています。
また、一部のクリーンテック製品、特にEV市場において、需要の伸びが想定よりも緩やかになっているとの見方もあります。補助金政策に後押しされた熱狂的な期待から、より現実的な需要予測へと市場の見方がシフトする中で、メーカー側が生産能力の増強ペースを調整し始めたとしても不思議ではありません。さらに、2024年の米国大統領選挙を控え、将来の政策変更リスクを懸念し、投資判断を一旦保留する動きも出ている可能性があります。
日本の製造業への影響と視点
こうした米国の動向は、日本の製造業にとっても決して対岸の火事ではありません。米国で計画されているバッテリー工場や半導体工場向けに、製造装置や部素材を供給している、あるいは供給を計画していた企業にとっては、顧客の投資計画の見直しが直接的な影響を及ぼす可能性があります。受注の延期やキャンセルといった事態に備え、顧客との密な情報交換がより一層重要になります。
一方で、この動きは、他国の補助金政策に過度に依存した事業計画の危うさを改めて浮き彫りにしたとも言えます。グローバルなサプライチェーンが政策一つで大きく揺れ動くリスクを再認識し、自社の技術的な優位性やコスト競争力といった、事業の本質的な強みを着実に磨き上げることの重要性が増しています。短期的なブームに踊らされることなく、足元の生産性改善や品質向上といった地道な取り組みこそが、不確実な時代を乗り越える礎となるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の米国の動向から、日本の製造業が汲み取るべき要点と実務的な示唆を以下に整理します。
要点
- 米国のクリーンテック製造業への投資ブームは調整局面にあり、特に2023年後半からプロジェクトの中止・延期が急増しています。
- 背景には、高金利による資金調達コストの増大、建設・人件費の高騰、一部製品の需要の不確実性、政策の先行き不透明感などが挙げられます。
実務への示唆
- サプライチェーンのリスク管理:米国市場向けのビジネスに関わる企業は、顧客の投資計画の進捗を改めて精査し、受注変動への備えを強化することが求められます。場合によっては、与信管理の見直しも必要となるでしょう。
- 事業計画の再評価:補助金などを前提とした楽観的な市場予測に依存するのではなく、より現実的で保守的な需要予測に基づき、事業計画や設備投資計画の妥当性を再評価する良い機会です。
- 技術優位性と国内基盤の強化:海外の政策変動リスクを再認識し、模倣が困難な独自の技術力や高品質なモノづくりといった、事業の根幹となる競争力に改めて注力すべきです。グローバルな混乱は、国内の技術開発・生産基盤の重要性を再認識させます。
- 継続的な情報収集:各国の政策動向、金利、為替、そして最終製品の市場動向などを継続的に注視し、変化の兆候を早期に捉えて迅速な意思決定につなげる情報収集体制の構築が不可欠です。


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