ベトナム地方政府による産業振興策に見る、サプライチェーンの新たな動向

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ベトナムのダクラク省が、地域産業の近代化に向けた具体的な支援策を計画していることが報じられました。本稿ではこの動きを、日本の製造業がグローバルなサプライチェーンを構築・運営していく上での視点から解説します。

ベトナム地方政府による生産近代化支援

ベトナム中南部のダクラク省の地元メディアによると、同省は2026年から2030年にかけて、約100の地方工業施設に対し、先進的な機械や設備の導入を支援する計画を進めているとのことです。この計画は、単なる設備投資の補助にとどまらず、生産管理、製品設計、包装といった、工場のオペレーションに関わる領域も支援対象に含まれている点が注目されます。

これは、ベトナムが単なる安価な労働力の提供拠点から、より付加価値の高い生産拠点へと転換しようとする国家的な動きが、地方レベルでも具体的に推進されていることを示唆しています。これまでもハノイやホーチミンなどの主要都市部では日系企業をはじめとする外資の進出により生産技術の高度化が進んできましたが、その波が地方のローカル企業にも及んできていると捉えることができます。

日本の製造業から見た背景と意味

こうした新興国の地方における産業振興策は、日本の製造業にとっていくつかの重要な意味合いを持ちます。第一に、サプライヤーの能力向上の可能性です。これまで品質や納期管理の面で課題があった地方のサプライヤーも、政府の支援を受けて設備を刷新し、生産管理のノウハウを導入することで、その能力が大きく向上する可能性があります。これは、サプライヤー選定の選択肢が広がることを意味します。

第二に、現地での協業や技術移転の新たな機会となり得ることです。日本の製造業が持つ優れた生産管理技術や品質管理手法は、近代化を目指す現地の企業にとって非常に価値が高いものです。政府の支援を追い風に、技術協力や合弁事業といった形で、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性も考えられます。

一方で、これは現地のローカル企業の競争力向上にも直結します。これまで日本企業が優位性を持っていた領域においても、現地企業が急速にキャッチアップしてくる可能性を念頭に置き、自社の強みを常に磨き続ける必要があります。

日本の製造業への示唆

今回のベトナム・ダクラク省の事例から、日本の製造業関係者が実務上考慮すべき点を以下に整理します。

1. サプライヤー評価の多角化
海外のサプライヤーを評価する際、現在の技術力やコストだけでなく、現地政府の産業支援策の対象となっているか、経営層に近代化への意欲があるかといった将来性も評価軸に加えることが重要です。これにより、将来有望なパートナーを発掘できる可能性があります。

2. グローバルな生産体制の再点検
新興国における生産拠点の役割は、常に変化しています。単なるコストメリットだけでなく、現地の技術レベルの向上やインフラ整備の状況を踏まえ、自社のグローバルな生産・調達戦略を定期的に見直す必要があります。生産管理や設計といった、より高度な機能をどの拠点に持たせるかを再検討する良い機会とも言えるでしょう。

3. 無形資産(ノウハウ)の価値の再認識
日本企業が長年培ってきた生産管理、品質管理、カイゼン活動といった現場のノウハウは、海外の生産拠点やサプライヤーの価値を向上させる上で強力な武器となります。こうした無形の資産をいかに体系化し、海外拠点へ効果的に移転していくかが、グローバルな競争力を維持・強化する鍵となります。

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