一見すると単なる書誌情報ですが、その背後には第二次世界大戦下のアメリカで国家の生産活動を統括した「米国生産管理局(Office of Production Management)」の存在があります。この歴史的な組織の役割を紐解くことは、現代のサプライチェーン管理や危機対応を考える上で、我々日本の製造業にとっても多くの示唆を与えてくれます。
はじめに:歴史の中に埋もれた「生産管理」の記録
海外の書評サイトGoodreadsに、「米国生産管理局(United States. Office of Production Management)」という組織が著者として登録され、数点の書籍が存在するという情報があります。これは些細な情報に見えるかもしれませんが、この組織が歴史上どのような役割を果たしたかを知ることで、我々が日々向き合っている「生産管理」という活動の重要性や、その本質について改めて考えるきっかけとなります。
米国生産管理局(OPM)とは何か
米国生産管理局(OPM)は、第二次世界大戦が激化する1941年に、フランクリン・ルーズベルト大統領のもとで設立されたアメリカの政府機関です。その主な目的は、アメリカが本格的に参戦する以前から、連合国への軍需物資供給と自国の防衛力強化のために、国内の膨大な生産能力を調整・管理することにありました。活動期間は翌1942年初頭までの約1年間と短いものでしたが、平時の経済体制から戦時体制へと移行する上で、極めて重要な役割を果たしました。
当時のアメリカは、欧州での戦火拡大を受け、「民主主義の兵器廠」となることを目指していました。そのためには、自動車工場を航空機工場に転換したり、民生品の生産を制限して希少な原材料を軍需品に優先的に割り当てたりといった、国家規模での大規模な産業構造の転換が不可欠でした。OPMは、まさにこの国家総力戦における生産計画と管理、すなわち「マクロレベルの生産管理」を担う組織だったのです。
国家規模でのサプライチェーンマネジメント
OPMの活動は、現代の言葉で言えば「国家規模のサプライチェーンマネジメント」そのものでした。彼らは、どの工場で、何を、どれだけ生産させるかを計画し、そのために必要な原材料、労働力、設備をどのように配分するかを決定していました。民間企業の自主性に任せるだけでは達成できない、国家的な目標達成のための、強力なトップダウンによるリソースの最適配分です。
日本の製造現場で私たちが日々行っている生産計画、資材調達、工程管理、労務管理といった活動が、国家という非常に大きな枠組みで展開されていたと想像すると、その複雑さと困難さが理解できるかと思います。個々の企業の利益や都合を超え、サプライチェーン全体の最適化を目指すという思想は、OPMの活動の中にその原型を見出すことができるでしょう。
歴史から学ぶ、危機対応と生産体制の強靭化
OPMの存在は、平時とは異なる「有事」において、製造業やサプライチェーンがどうあるべきかを考える上で重要な示唆を与えてくれます。ここでいう「有事」とは、戦争だけを指すものではありません。近年のパンデミック、大規模な自然災害、あるいは地政学的な緊張による特定地域からの供給途絶など、事業の継続を脅かすあらゆる危機が含まれます。
このような危機に直面した際、一企業だけの努力には限界があります。業界全体、あるいは官民が連携して、社会全体として必要な物資を優先的に生産・供給する体制をいかに迅速に構築できるか。OPMの歴史は、こうした危機対応における生産体制の柔軟性(アジリティ)と強靭性(レジリエンス)の重要性を、私たちに教えてくれます。
日本の製造業への示唆
米国生産管理局(OPM)の歴史から、現代の日本の製造業が学ぶべき点を以下に整理します。
1. 全体最適の視点を持つこと
自社の生産効率や利益の追求はもちろん重要ですが、パンデミックや災害のような社会的な危機においては、サプライチェーン全体、ひいては社会全体の利益を考慮した生産活動が求められます。自社の持つ技術や生産能力を、社会貢献のためにどのように活用できるかという視点を平時から持っておくことが重要です。
2. 生産能力の柔軟性を高めること
特定の製品の大量生産に特化したラインは効率的ですが、外部環境の急変には脆弱です。多品種少量生産への対応能力や、段取り替えの迅速化、生産品目を柔軟に切り替えることができる体制の構築は、不確実性の高い時代における重要なリスク管理策となります。
3. サプライチェーンの強靭化(レジリエンス)を推進すること
特定の国やサプライヤーへの過度な依存がもたらすリスクは、近年ますます高まっています。調達先の複数化、代替材料の検討、そして国内生産拠点の維持・強化といった、サプライチェーンの強靭化に向けた具体的な取り組みを、事業継続計画(BCP)の中核に据えるべきでしょう。
4. 官民連携の重要性を認識すること
国家的な危機においては、政府による資源配分や情報提供と、民間企業の持つ生産技術や現場ノウハウとの連携が不可欠です。OPMは、その歴史的な一例です。平時から業界団体や行政との対話のチャンネルを維持し、有事の際に円滑に協力できる関係を築いておくことが求められます。


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