台湾メディアは、ICT関連産業の輸出が急増する一方で、金属や化学、工作機械といった伝統的な製造業がその恩恵を受けられていない「二極化」の状況を報じています。この現象は、特定の成長産業に経済が牽引される中で、他の多くの製造業が直面しうる課題を浮き彫りにしています。
好調な台湾経済の裏で進む二極化
Taipei Timesが報じた内容によれば、近年の台湾では半導体をはじめとするICT(情報通信技術)分野の輸出が記録的な成長を遂げています。世界的なデジタル化の潮流と半導体需要の高まりが、台湾の関連企業に大きな追い風となっていることは周知の事実です。しかしその一方で、金属製品、プラスチックなどの化学製品、金属加工機械といった、いわゆる「伝統的製造業」は、この輸出ブームから取り残されている状況が指摘されています。
これは、一国の経済が特定の先端産業に牽引される際に起こりうる構造的な課題と言えるでしょう。好調な分野に人材や投資が集中する一方、それ以外の裾野の広い産業が成長の恩恵を十分に受けられず、国内で産業間の格差が拡大していくという構図です。我々日本の製造業にとっても、決して他人事として片付けられる問題ではありません。
なぜ伝統的製造業は取り残されるのか
こうした二極化が進む背景には、いくつかの要因が考えられます。第一に、サプライチェーンの特性の違いです。半導体のような先端産業は、特定の地域に高度に集積した、クローズドなサプライチェーンを形成する傾向があります。その中で中核を担う企業群は大きな成長を遂げますが、その枠組みから外れた企業は恩恵を受けにくいのが実情です。一方、素材や汎用部品といった分野は、よりグローバルでオープンな競争環境にあり、常に厳しい価格競争に晒されています。
第二に、付加価値の源泉が変化している点です。今日の市場では、製品の性能や品質だけでなく、それが組み込まれる最終製品やサービス全体のエコシステムの中でどのような価値を生み出すかが問われます。伝統的な製造業が長年培ってきた「良いモノを安く作る」という強みだけでは、競争優位性を保つことが難しくなってきているのかもしれません。
日本の製造現場に置き換えてみても、同様の課題が散見されます。例えば、自動車産業がEV(電気自動車)へと大きく舵を切る中で、従来のエンジン部品を手掛けてきたサプライヤーは、新たな事業の柱を模索する必要に迫られています。特定の産業や大手メーカーに依存してきた事業構造そのものを見直す時期に来ていると言えるでしょう。
日本の製造業への示唆
この台湾の事例は、日本の製造業が今後進むべき道を考える上で、重要な示唆を与えてくれます。以下に要点を整理します。
1. 産業構造の変化を直視する
マクロ経済の指標が好調であっても、自社が属する業界やサプライチェーンが同じように成長しているとは限りません。自動車や半導体といった特定の成長分野への依存が、逆に経営のリスクになっていないか、常に冷静な分析が求められます。
2. サプライチェーン内での自社の価値を再定義する
グローバルなサプライチェーンの中で、自社がどのような独自の価値を提供できるのかを問い直す必要があります。単なるコストや納期対応だけでなく、他社には真似のできない技術力、品質管理能力、あるいは顧客の課題解決に踏み込む提案力こそが、これからの競争力の源泉となります。
3. 付加価値向上のための地道な努力を継続する
価格競争から脱却するためには、研究開発への投資や、生産プロセスの革新による品質・生産性の向上が不可欠です。また、デジタル技術を活用して、設計から製造、販売、アフターサービスに至るまでのプロセス全体を最適化し、新たな価値を創造していく視点も重要になります。
4. 事業ポートフォリオの多様化
特定の業界や顧客への依存度が高い場合は、自社のコア技術を応用できる新たな市場を積極的に探るべきでしょう。取引先や事業分野を多様化させることは、外部環境の変化に対する耐性を高め、持続的な成長を可能にするための重要な経営戦略です。


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