「モノ売り」からの脱却:エネルギー業界に見る『生産保証』という新たな価値提供

global

海外のエネルギーサービス企業の事業内容から、日本の製造業が学ぶべきビジネスモデルのヒントを探ります。単に製品を供給するだけでなく、顧客の生産プロセス全体を支援し、その安定稼働を保証するという考え方は、今後の事業展開において重要な視点となるでしょう。

顧客の生産を支える「プロダクション・アシュアランス」という思想

海外のエネルギーサービス企業の事業内容に、「プロダクション・アシュアランス・ケミカル(Production Assurance Chemicals)」や「統合生産管理プロジェクト(Integrated Production Management Projects)」といった言葉が見られます。これは、石油やガスといった資源を安定的に生産し続けるために、化学品や専門サービス、管理プロジェクトを統合的に提供する事業形態を指します。特に注目すべきは「プロダクション・アシュアランス(生産保証)」という考え方です。

これは、自社が提供する製品やサービスが、顧客の生産活動を確実に、そして安定的に維持することを保証するという思想です。日本の製造業における「品質保証」が、自社製品の仕様や性能を保証することに主眼を置いているのに対し、「生産保証」は、その製品が組み込まれた顧客の生産ライン全体のパフォーマンスにまで責任の範囲を広げた考え方と捉えることができます。単に「良いモノ」を作るだけでなく、それを使って「顧客が良い生産活動を続けられる」ことこそが提供価値である、という視点の転換がここにあります。

製品とサービスを組み合わせたソリューション提供へ

こうした事業では、化学品のような「モノ」の提供と、人工採油サービスや地上設備の管理といった「コト(サービス)」が一体となっています。顧客が抱える課題、例えば「原油の流動性を改善して生産効率を上げたい」や「パイプラインの腐食を防いで安定稼働させたい」といった具体的なニーズに対し、製品とサービスを最適に組み合わせたソリューションとして提供するのです。

これは、日本の製造業、特にBtoBの装置メーカーや素材メーカーにとっても大いに参考になるモデルです。例えば、工作機械メーカーが単に機械を販売するだけでなく、顧客の工場の生産ライン全体の稼働率をモニタリングし、予防保全や改善提案まで含めた年間契約を結ぶような事業がこれにあたります。自社の強みである製品を核としながらも、その周辺にある顧客の課題解決にまで事業領域を広げることで、価格競争から脱却し、より強固なパートナーシップを築くことが可能になります。

価値の源泉は顧客の現場への深い理解

「生産保証」や「統合生産管理」といった高度なソリューションを提供するためには、顧客の生産現場に対する深く、そして専門的な理解が不可欠です。どのような環境で、どのようなプロセスを経て、何に困っているのか。そうした現場の一次情報を正確に把握し、自社の技術や製品をいかに適用すべきかを判断する能力が求められます。これは、机上の空論ではなく、技術者が顧客の現場に足繁く通い、時には常駐して課題を共有するような密な連携があって初めて実現するものです。

幸い、日本の製造業は伝統的に、顧客との「すり合わせ」を得意としてきました。この強みを活かし、営業担当者だけでなく、開発や生産技術、品質管理の担当者も顧客の現場を理解する機会を増やすことが、新たなビジネスモデルへの移行を円滑に進める鍵となるでしょう。自社の技術シーズと、顧客の現場ニーズを結びつけることで、新たな価値創造の機会が見えてくるはずです。

日本の製造業への示唆

今回の事例から、日本の製造業が実務に取り入れるべき要点と示唆を以下に整理します。

  • 「品質保証」から「生産保証」への視点拡大:自社製品の品質を保証するだけでなく、その製品が使われる顧客の生産プロセス全体の安定化や効率化にまで貢献するという視点を持つことが重要です。これは、自社の事業領域を再定義するきっかけとなります。
  • 製品(モノ)とサービス(コト)の融合:製品単体での販売から、保守、メンテナンス、コンサルティングといったサービスを組み合わせたソリューション提供への転換を目指すべきです。これにより、顧客との長期的な関係を構築し、収益の安定化を図ることができます。
  • 顧客現場の課題解決を起点とした事業開発:新たな製品開発やサービス設計を行う際、常に「これは顧客のどの生産課題を解決するのか」という問いを起点にすることが求められます。そのためには、これまで以上に顧客の現場に入り込み、潜在的なニーズを掘り起こす活動が不可欠です。

コモディティ化や価格競争が激化する中で、自社の技術や製品の価値をいかに高めていくかは、多くの企業にとって喫緊の課題です。顧客の事業に深く関与し、その成功を支えるパートナーとなること。エネルギー業界に見られるこうした動きは、そのための具体的な道筋を示唆していると言えるでしょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました