国際海運・物流を手掛けるSITC社が開催した年次安全生産総括会議の概要が報じられました。この事例は、安全を生産活動と一体のものとして捉え、部門横断的に管理する体制の重要性を示唆しています。本記事では、この取り組みを日本の製造業の視点から解説します。
SITC社の年次安全生産会議の概要
香港を拠点とする海運・物流企業のSITC International Holdings社が、「2025年第4四半期および年次安全生産総括会議」を開催したことが報じられました。この会議には、同社の安全生産管理委員会、調達管理センター、安全監督部などの主要な関係者が参加したとされています。特定の企業の定例会議ではありますが、その名称や参加部署から、組織的な安全管理に対する強い意志を読み取ることができます。
「安全生産」という考え方と日本の製造現場
特筆すべきは、「安全生産(Safety Production)」という言葉です。これは単に「安全」と「生産」を並べたものではなく、「安全の確保なくして安定した生産はあり得ない」という、両者が不可分であるとの思想に基づいています。日本の製造現場では長年「安全第一」が掲げられていますが、時に生産目標が優先され、安全活動が形式的なものに陥ってしまうケースも散見されます。SITC社の事例は、安全を生産活動の基盤であり、品質や効率を支える土台として明確に位置づけることの重要性を改めて示していると言えるでしょう。経営層から現場の作業員一人ひとりに至るまで、この思想が浸透しているかどうかが、組織の安全文化を測る一つの指標となります。
定期的な総括会議と部門横断的な体制の意義
また、年に一度「総括会議」という形で正式なレビューの場を設けている点も重要です。これは、安全管理におけるPDCAサイクル(Plan-Do-Check-Act)を確実に回すための仕組みです。一年間の安全成績やヒヤリハット、事故事例などをデータに基づいて分析・評価し、次年度の目標設定や改善計画に繋げるという一連のプロセスは、継続的な安全レベルの向上に不可欠です。
さらに、会議に安全監督部門だけでなく、調達管理センターといった部署が参加している点も見逃せません。これは、安全管理が特定の専門部署だけの任務ではないことを示しています。例えば、調達部門が関わることで、新規に導入する設備や原材料の安全性評価、あるいは協力会社や委託先の安全基準の確認といった、サプライチェーン全体を視野に入れた広範な安全確保が可能になります。自社の工場内だけでなく、協力会社を含めたエコシステム全体で安全レベルを底上げしていく視点は、現代の製造業においてますます重要性を増しています。
日本の製造業への示唆
今回のSITC社の事例から、日本の製造業が改めて確認すべき実務的な示唆を以下に整理します。
1. 安全と生産の一体管理の徹底
「安全は生産の前提条件である」という思想を組織全体で再確認し、安全活動をコストではなく、生産性や品質を維持・向上させるための投資として位置づけることが重要です。安全目標と生産目標を関連付け、経営計画の中に明確に組み込むことが求められます。
2. 定期的なレビュープロセスの形骸化防止
年度末や期末に実施される安全大会やレビュー会議を、単なる報告会で終わらせてはなりません。インシデントの根本原因分析や、対策の有効性評価を客観的なデータに基づいて行い、具体的な次期アクションプランと予算に結びつける実効性のある場とすることが肝要です。
3. 部門横断的な安全管理体制の強化
安全管理を安全衛生委員会や担当部署任せにせず、設計、開発、調達、製造、品質保証、物流など、あらゆる部門を巻き込んだ連携体制を構築することが望まれます。各部門がそれぞれの業務プロセスの中に「安全」の視点を組み込むことで、より網羅的で実効性の高いリスク管理が可能となります。
4. 経営層の強いコミットメント
こうした組織的な安全活動を推進するためには、経営層の揺るぎないコミットメントが不可欠です。トップが自ら安全に関する会議を主導し、現場にメッセージを発信し続けることで、安全を最優先する組織文化が醸成されていきます。


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