世界的なエネルギーサービス企業であるハリバートン社は、2026年を事業の「リバランシング(再調整)」の年と位置付けています。これは、先行きの不透明な事業環境において、中長期的な視点で事業構造を再構築する意思の表れであり、同様の課題に直面する日本の製造業にとっても重要な示唆を含んでいます。
事業環境の変化と「リバランシング」という視点
先日、石油・ガス開発サービス大手のハリバートン社が決算説明会の中で、2026年の事業運営方針を「リバランシング(rebalancing)」という言葉で表現したことが注目されています。これは、北米および国際市場における活動状況や事業遂行力を見据えた上での、中長期的な戦略的位置づけを示唆するものです。
エネルギー業界は、地政学リスクや市況の変動に常に晒される、極めて不確実性の高い事業領域です。そのような環境下で事業を率いる経営陣が「リバランシング」という言葉を用いる背景には、単なる短期的な業績見通しの修正ではなく、事業ポートフォリオや資産配分、サプライチェーンといった事業の根幹を、変化する環境に合わせて再調整・最適化していくという強い意志が感じられます。これは、従来の延長線上での改善活動とは一線を画す、より戦略的な舵取りと言えるでしょう。
日本の製造業における「リバランシング」の対象
この「リバランシング」という考え方は、現在の日本の製造業が置かれた状況を考える上で、非常に示唆に富んでいます。私たち日本の製造業においても、以下のようなテーマで自社の事業を「再調整」する必要性に迫られているのではないでしょうか。
1. 生産拠点の再調整:
為替の変動や地政学リスクの高まりを受け、海外拠点と国内拠点の役割分担を再評価する時期に来ています。単なるコスト比較だけでなく、サプライチェーンの強靭性、技術の流出防止、国内雇用の維持といった多角的な視点から、最適な生産体制を再構築することが求められます。
2. 製品・事業ポートフォリオの再調整:
既存の主力製品・事業に依存し続けるのではなく、市場の成長性や収益性を見極め、経営資源の再配分を検討する必要があります。CASEやGX(グリーン・トランスフォーメーション)といった大きな潮流の中で、自社のコア技術を活かせる新たな事業領域へのシフトも重要なテーマです。
3. 設備と人材への投資の再調整:
深刻化する人手不足と、DX(デジタル・トランスフォーメーション)の進展は、設備投資のあり方を根本から変えつつあります。省人化・自動化への投資はもちろんのこと、データを活用した生産性向上や品質管理高度化への投資は不可欠です。同時に、従業員のリスキリング(学び直し)を推進し、新たな技術を使いこなせる人材を育成することも、重要なリバランシングの一環です。
変化を前提とした経営へ
かつてのように、一度構築した生産体制や事業構造が長期間にわたって競争力を維持できる時代は終わりを告げました。これからの工場運営や企業経営には、外部環境の変化を常にモニターし、それに合わせて自社の戦略やオペレーションを柔軟に「リバランシング」していく姿勢が不可欠となります。今回のハリバートン社の事例は、業界は違えど、すべての製造業にとって、自社の現状を客観的に見つめ直し、将来に向けた舵取りを考える良いきっかけを与えてくれるものと言えるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の考察から、日本の製造業の実務に活かせる要点と示唆を以下に整理します。
- 中長期視点での戦略見直し: 短期的な生産計画やコスト削減だけでなく、2〜3年先を見据え、自社の生産体制、サプライチェーン、技術投資のあり方を「リバランシング」する視点を持つことが重要です。
- 現状の客観的な評価: 為替、人件費、地政学リスクなど、事業の前提条件が大きく変化していることを認識し、現在の事業ポートフォリオや生産拠点が本当に最適なのかをゼロベースで問い直す必要があります。
- 変化への備えとしての投資: 将来の不確実性に対応するため、自動化・省人化技術への投資や、サプライチェーンの複線化など、変化に対する耐性(レジリエンス)を高めるための投資を計画的に実行することが求められます。
- 全社的な対話の促進: 「リバランシング」は経営層だけの課題ではありません。工場、技術、営業、購買といった各部門が現状認識を共有し、部門の壁を越えて全社最適の視点で議論することが、実効性のある再調整に繋がります。


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