米国が全世界の半導体を対象に25%という高い関税を導入する一方、台湾とは別個の協定を結び、関税を低く抑える見込みです。この動きは、半導体サプライチェーンの再編を加速させ、日本の製造業における調達・生産戦略に大きな影響を及ぼす可能性があります。
米国、半導体サプライチェーン再編へ大胆な一手
最近の報道によると、米国政府は、国家安全保障と国内産業の保護を目的として、全世界から輸入される半導体に対し、一律25%の追加関税を課す方針を固めた模様です。この政策の背景には、近年の世界的な半導体不足が自動車産業をはじめとする多くの基幹産業に深刻な打撃を与えたことへの反省があります。特定の地域、特にアジアへの依存度が高い半導体サプライチェーンの脆弱性を解消し、国内での生産能力を強化しようとする強い意志の表れと言えるでしょう。
台湾との連携強化と「フレンドショアリング」の具体化
今回の政策で特に注目すべきは、全世界に高い関税を課す一方で、台湾とは個別の貿易協定を締結した点です。この協定により、台湾製の半導体は25%の関税から除外されるか、あるいは大幅に低い税率が適用される見通しです。その見返りとして、台湾の主要半導体メーカーによる米国内への投資拡大が期待されています。これは、TSMCがアリゾナ州で進める大型工場建設のような動きをさらに後押しするものと考えられます。このように、関税政策と国内への投資誘致を組み合わせる手法は、米国が信頼できる同盟国や友好国との間でサプライチェーンを再構築しようとする「フレンドショアリング」戦略を具体化したものと捉えることができます。
日本の製造現場への影響
この米国の新関税は、日本の製造業にとっても決して対岸の火事ではありません。日本から米国へ半導体そのものを輸出する場合だけでなく、半導体を組み込んだ電子部品、自動車部品、産業機械などを輸出する場合にも、コストが大幅に増加する懸念があります。例えば、自動車に搭載される無数のECU(電子制御ユニット)や、工場の自動化設備に不可欠な制御機器など、我々が日々生産している製品の米国市場での価格競争力に直接的な影響が及ぶ可能性があります。調達部門や生産管理部門は、米国向け製品に使用している半導体の原産国を改めて精査し、関税の影響を最小限に抑えるための調達・生産計画の見直しを迫られることになるでしょう。
日本の製造業への示唆
今回の米国の動きを踏まえ、日本の製造業関係者は以下の点を考慮する必要があると考えられます。
1. コスト影響の試算と対策の検討
まずは、自社製品の米国向け輸出における関税影響額を正確に把握することが急務です。その上で、顧客との価格交渉、コスト削減、あるいは部材の代替といった対策を早急に検討する必要があります。
2. サプライチェーンの再評価と多様化
米国市場向けの製品については、半導体の調達先を米国国内や台湾、その他関税の影響を受けにくい地域へ切り替えることも現実的な選択肢となります。これを機に、特定の国・地域への依存リスクを再評価し、サプライチェーンの多角化(マルチソース化)を一層進めるべきでしょう。
3. 地政学リスクを経営の前提条件に
通商政策が、企業の調達・生産活動に直接的な影響を及ぼすことが常態化しつつあります。今後も同様の政策が他国でも起こりうると想定し、地政学リスクを常に監視し、迅速に対応できる情報収集と意思決定の体制を構築することが、事業継続性の観点から極めて重要です。
4. 国内生産の価値の再認識
日本政府が進める半導体の国内生産強化(ラピダスへの支援など)は、こうした海外の政策変更に対する有効な防御策となり得ます。自社の長期的な生産戦略において、国内で生産・調達する比率を高めることの価値を、改めて見直す時期に来ているのかもしれません。


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