ホットソース瓶が「爆発」、製造委託先を提訴。食品製造における発酵管理と委託生産の品質保証

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米国アイオワ州のホットソース会社が、製品の瓶が発泡・発酵し爆発したとして製造委託先を提訴しました。この一件は、特に食品製造における微生物管理の重要性と、外部委託における品質保証体制の構築がいかに重要であるかを我々に問いかけています。

事件の概要:意図せぬ発酵と容器の破損

米国アイオワ州のホットソースブランドが、自社製品の製造を委託していたメーカーを提訴したという報道がありました。訴えの内容は、納品された瓶詰製品が、流通過程や店頭で発泡・発酵し、内圧の上昇によって容器が「爆発」する事態に至ったというものです。消費者や小売店からのクレームが相次ぎ、ブランドイメージの毀損と経済的損失につながったとみられます。

食品、特にソースのような液体製品において、意図しない発酵は重大な品質不良です。製品内に残存した酵母や細菌などの微生物が、糖分などを栄養源として増殖し、炭酸ガスを発生させます。密閉された容器内ではこのガスが内圧を高め、最終的にはキャップの飛びや瓶の破損・破裂といった危険な事態を引き起こすのです。

なぜ問題は起きたのか:製造工程における品質管理の視点

元記事では詳細な原因は明らかにされていませんが、生産技術や品質管理の実務から考えられる原因はいくつかあります。食品製造における微生物管理は、まさに品質の根幹をなすものです。

1. 殺菌工程の不備:
ホットソースのような酸性度の高い製品は、比較的腐敗しにくいとされています。しかし、耐酸性の酵母や芽胞菌などが完全に死滅していなければ、時間経過ととも活動を再開する可能性があります。加熱殺菌(パスチャライゼーション)の温度や時間が不十分であった、あるいは殺菌釜内の温度分布にムラがあった、といった可能性が考えられます。

2. 原材料の微生物汚染:
唐辛子や酢、香味野菜といった原材料の受け入れ段階で、すでに微生物汚染レベルが高かった可能性も否定できません。原材料の品質基準や受け入れ検査体制が、適切に機能していたかが問われます。

3. 充填・巻締め工程での汚染(コンタミネーション):
殺菌後の製品が、充填機や配管、あるいは作業環境から二次的に汚染されるケースです。また、瓶のキャップを密閉する巻締め工程に不具合があり、密封性が不完全だった場合、外部から微生物が侵入することも考えられます。

4. レシピと製造条件のミスマッチ:
委託元が提示したレシピ(pH、糖度、塩分濃度、保存料の有無など)と、委託先の製造設備やプロセスとの間に、微妙な不整合があった可能性も考えられます。実験室レベルでは問題なくとも、量産スケールでは条件が変動し、微生物の増殖を許す「隙」が生まれることがあります。

製造委託(OEM/ODM)における品質保証の難しさ

この事例は、自社のブランドを冠した製品の製造を外部に委託する際の、本質的なリスクと難しさを浮き彫りにしています。委託元(ブランドオーナー)は最終的な製品品質に全責任を負いますが、日々の製造プロセスを直接管理しているわけではありません。

委託元と委託先との間で、品質基準や製造条件、検査項目、異常発生時の対応といった取り決めが、契約書や仕様書の上だけでなく、現場レベルで深く共有・徹底されているかが重要になります。特に、どちらの責任範囲かが曖昧になりがちな「原材料の管理」や「工程内での品質の作り込み」については、緊密な連携と定期的な監査が不可欠です。

日本の製造業への示唆

今回の事例は、対岸の火事として見過ごすことはできません。ファブレス経営の拡大や、生産能力の補完、コスト削減などを目的に製造委託を活用する企業は日本でも数多く存在します。この一件から、我々が学ぶべき実務的なポイントを以下に整理します。

1. 委託先選定と定期監査の徹底:
コストや納期だけでなく、委託先の品質保証体制(QMS)、衛生管理レベル、技術力、トレーサビリティシステムを厳格に評価することが不可欠です。契約後も、定期的な実地監査を通じて、定められたプロセスが遵守されているかを確認し、改善を促す関係性を築く必要があります。

2. 技術・品質情報の密な連携:
仕様書を渡して終わりではなく、製品の特性や潜在的な品質リスクについて、委託先の技術者と深く議論し、共通認識を持つことが重要です。特に新規製品の立ち上げや仕様変更の際には、試作段階での評価を共同で念入りに行い、量産移行のリスクを洗い出すべきです。

3. 責任分界点の明確化:
原材料の受け入れ基準、工程内検査の基準と責任者、出荷判定の権限、そして品質問題が発生した際の費用負担や原因究明の協力体制など、責任の所在と役割分担を契約で明確に定めておくことが、万一の際の混乱を防ぎます。

4. 市場からのフィードバック共有:
市場で発生したクレームや品質に関する情報を速やかに委託先と共有し、共同で原因分析と再発防止にあたる仕組みを構築しておくことが、品質レベルの維持・向上につながります。委託先を単なる「下請け」ではなく、品質を作り込む「パートナー」として捉える視点が求められます。

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